[P71-7] 開心術後,気管チューブからの持続出血で抜管に難渋した1 症例
【緒言】
気道系出血の機序には気道・血管の直接障害,気管支静脈の拡張・うっ血、毛細血管の透過性亢進,血小板および凝固・線溶系の異常などがある.鑑別には感染症,腫瘍,心・血管疾患,自己免疫性疾患,血液凝固異常,薬剤性,医原性があり,これらに対して原疾患の治療,ステロイドや止血剤の投与,場合によっては分離肺換気や高PEEPでの人工呼吸管理,気管・血管内治療や外科的治療が必要となることがある.今回,気道系出血の原因が無気肺の器質性病変だった開心術の症例を経験したので報告する.
【症例】
75 歳男性,大動脈弁狭窄症に対し大動脈弁置換術が施行された.既往歴にCOPD,脳梗塞,閉塞性動脈硬化症があり,抗血栓薬2 剤の内服は術直前も継続した.術前より左下肺野の一部に器質化した無気肺がありVC 66 %,FEV1.0 47 %と混合性の肺機能障害を認めていた.全身麻酔導入直後のP/F ratioは509 で,ヘパリン300 単位/kgを投与し人工心肺が開始された.人工心肺管理中の呼吸状態は問題なく,ACTの過度な延長も認めなかった.人工心肺から離脱後P/F ratioは300 台で経過したが徐々に酸素化が悪化し,術直後に気管チューブより50 ml程度の出血を認めた.術後1 日目に抜管したが,喀血による低酸素血症で再挿管した.気管支ファイバーで左下肺葉より静脈性の出血を認めた.開心術後で気胸があり高PEEPによる止血は困難だった.トラネキサム酸,ステロイド,また術後の血小板低下に対し血小板輸血を行ったが止血に時間を要し,術後6 日目に漸く抜管した.
【結論・考察】
気道系出血の出血源の同定には気管支ファイバースコープが有用とされており,約5 ~10 %は各種検査でも原因が同定できず自然軽快するとされている.本症例は開心術後という特殊な状況だった.開心術の症例では肺動脈カテーテルや右上肺静脈へのベントチューブ留置で気道系出血が生じ得るが,いずれも右側への留置であり左側が出血源である本症例ではこれらは否定的だった.本症例は術前より左下肺野に器質化した無気肺を形成しており,術中の抗凝固薬の使用により無気肺から出血が生じ止血に難渋した可能性が考えられた.気道系出血の原因として無気肺の器質性病変も鑑別となることがわかった.
気道系出血の機序には気道・血管の直接障害,気管支静脈の拡張・うっ血、毛細血管の透過性亢進,血小板および凝固・線溶系の異常などがある.鑑別には感染症,腫瘍,心・血管疾患,自己免疫性疾患,血液凝固異常,薬剤性,医原性があり,これらに対して原疾患の治療,ステロイドや止血剤の投与,場合によっては分離肺換気や高PEEPでの人工呼吸管理,気管・血管内治療や外科的治療が必要となることがある.今回,気道系出血の原因が無気肺の器質性病変だった開心術の症例を経験したので報告する.
【症例】
75 歳男性,大動脈弁狭窄症に対し大動脈弁置換術が施行された.既往歴にCOPD,脳梗塞,閉塞性動脈硬化症があり,抗血栓薬2 剤の内服は術直前も継続した.術前より左下肺野の一部に器質化した無気肺がありVC 66 %,FEV1.0 47 %と混合性の肺機能障害を認めていた.全身麻酔導入直後のP/F ratioは509 で,ヘパリン300 単位/kgを投与し人工心肺が開始された.人工心肺管理中の呼吸状態は問題なく,ACTの過度な延長も認めなかった.人工心肺から離脱後P/F ratioは300 台で経過したが徐々に酸素化が悪化し,術直後に気管チューブより50 ml程度の出血を認めた.術後1 日目に抜管したが,喀血による低酸素血症で再挿管した.気管支ファイバーで左下肺葉より静脈性の出血を認めた.開心術後で気胸があり高PEEPによる止血は困難だった.トラネキサム酸,ステロイド,また術後の血小板低下に対し血小板輸血を行ったが止血に時間を要し,術後6 日目に漸く抜管した.
【結論・考察】
気道系出血の出血源の同定には気管支ファイバースコープが有用とされており,約5 ~10 %は各種検査でも原因が同定できず自然軽快するとされている.本症例は開心術後という特殊な状況だった.開心術の症例では肺動脈カテーテルや右上肺静脈へのベントチューブ留置で気道系出血が生じ得るが,いずれも右側への留置であり左側が出血源である本症例ではこれらは否定的だった.本症例は術前より左下肺野に器質化した無気肺を形成しており,術中の抗凝固薬の使用により無気肺から出血が生じ止血に難渋した可能性が考えられた.気道系出血の原因として無気肺の器質性病変も鑑別となることがわかった.