[P72-3] 総腸骨動脈瘤破裂に伴う心肺停止に対して、VA-ECMOを導入し、救命し得た一例
(背景)一般的に、Venoarterial-Extracorporeal Membrane Oxygenation(VA-ECMO)は、心原性ショック・難治性致死的不整脈に伴う心肺停止に対して導入し、その間に原疾患の治療を行う。出血性ショックに導入した場合には、出血のコントロールばかりでなくECMOの維持も困難であり、予後は不良である。今回、我々は、右総腸骨動脈瘤破裂による心肺停止にも関わらず、Damage Control Strategy(DCS)のもと緊急Endo Vascular Aortic Repair(EVAR)による止血術を含めた集学的治療により救命し、独歩にてリハビリ転院するに至った症例を経験したので報告する。(臨床経過)48歳、男性。突然の上腹部痛を訴え顔面蒼白となり救急要請。救急隊接触後に心停止状態となり、救急搬送となった。来院時初期波形PEA、心肺蘇生を施行するも反応しなかった。エコーにて、大動脈解離を示唆する所見がなく、原因不明の心肺停止として、Extracorporeal Cardio Pulmonary Resuscitation(ECPR)を施行するためにVA-ECMOを導入した。蘇生後、CT検査を施行すると右総腸骨動脈瘤破裂を認めた。大量輸血によりVA-ECMOを維持し、DCSのもと、緊急EVARにて止血術を施行した。しかし、腹腔内及び後腹膜への大量出血により、腹部コンパートメント症候群を来たしたため、緊急開腹術を施行した。小腸間膜裂傷部からの出血に対し、Deadly triadを認めており、ガーゼパッキングを行い手術を終了とした。その後、出血のコントロールが不良であったために、再度止血術を行い、ガーゼパッキングを追加した。第2病日、循環動態は安定、VA-ECMOを離脱し、第4病日に根治的閉腹術を施行した。肺炎、創感染を認めたものの、第41病日にリハビリテーション継続目的に独歩にて転院した。(結論)総腸骨動脈瘤破裂が原因による心肺停止に対して、VA-ECMOを導入するも、DCSのもと適切な出血のコントロールを含めた集学的治療を行うことで救命し得た。治療戦略として、当初、心肺停止の原因として、総腸骨動脈瘤破裂による出血性ショックを認知できず、ECPRとしてVA-ECMOを導入した。原因が早期に認知できていれば、大動脈内バルーン遮断もしくは開胸大動脈遮断下での心肺蘇生の継続を施行したと考えられる。通常、出血性ショックに対するVA-ECMOの導入は禁忌とされている。しかし、本症例のような出血性ショックによる心肺停止に対しても、DCSのもと、迅速・的確な集学的治療が救命につながったと考えられた。