第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P72] 一般演題・ポスター72
補助循環03

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小林 誠人(公立豊岡病院 但馬救命救急センター)

[P72-7] V-A ECMO管理中に大腿深動脈へのカニューレ迷入により下肢コンパートメント症候群が惹起された一例

栗原 健, 那須 道高 (浦添総合病院救急集中治療部)

【緒言】V-A ECMOでは大腿部に太いカニューレを挿入するため下肢虚血が生じやすく, コンパートメント症候群は合併症の1つとして知られている. 【症例】特に既往歴のない64歳男性が急性冠症候群による心室細動のためV-A ECMO挿入となった. V-A ECMOは透視下に左大腿動脈より送血管を留置し右大腿静脈に脱血管を留置した. 全身管理は良好であったが, 第2病日に左下肢の虚血が疑われ, 左鼠径部から逆行性に還流されるようにエコーガイド下に4Fr動脈カニューレを留置した. V-A ECMOは第3病日に離脱したが, 左下腿の色調不良は増悪し腫脹や疼痛, 感覚障害も出現した. 左肢の造影CTで下肢遠位の還流維持目的に挿入したカニューレが大腿深動脈に留置されていた. needle manometer法によるコンパートメント内圧は前方60mmHg, 外側 70mmHg, 浅後方 30mmHg, 深後方 30mmHgであった. 以上から前方・外側コンパートメント症候群と診断し緊急減張切開術を施行した. 原因として左下腿の還流維持のために挿入したカニューレが大腿深動脈に迷入したことにより, より左下腿の虚血が惹起されたことが考えられた. 減張切開術後, CK 13582 U/Lまで上昇したが, 腎障害なく経過した. 現在リハビリテーションを施行中であるが, 下腿の感覚は消失したまま経過している.【考察】V-A ECMO管理中に還流維持のために追加したカニューレが大腿深動脈へ迷入し, より下腿虚血を惹起し下腿コンパートメント症候群に至った一例である. V-A ECMO管理中に下肢虚血が生じた際にはカットダウン法や逆行性にカニューレを留置し遠位側を還流する方法がある. 大腿深動脈は大腿動脈より分枝する動脈であり, その後内側・外側回旋動脈を出し、大腿の途中で終わるため下腿には還流しない. 大腿深動脈の影響によるコンパートメント症候群の多くは大腿コンパートメント症候群として発症することが多く, 相対的虚血による影響の報告は少ない.また透視下の穿刺の際は遠位側で穿刺すると深大腿動脈に迷入しやすいと考えられている一方で, エコーガイド下に留置する際の大腿深動脈への注意点などの報告は少なく, 逆行性に穿刺するときは注意をする必要がある.