第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

補助循環

[P73] 一般演題・ポスター73
補助循環04

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:00 ポスター会場11 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:萩原 祥弘(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[P73-7] 重症呼吸循環不全に対しveno-arterial-venous (vav) ECMOを導入し救命し得た1症例

金澤 綾子1, 原山 信也1, 山下 美沙子1,2, 大竹 晶子1, 遠藤 武尊1,2, 尾辻 健1, 内田 貴之1, 二瓶 俊一1, 相原 啓二1, 蒲地 正幸1 (1.産業医科大学病院 集中治療部, 2.産業医科大学 麻酔科)

【背景】膜型人工肺; extracorporeal membrane oxygenation (ECMO)は重症患者救命において極めて重要な医療機器である。veno-venous (vv) ECMOとしての人工肺では、循環に対してのサポートにはならず、veno-arterial (va) ECMOでは、自己肺の酸素化が悪い状況では、Harlequin syndromeの発生から心臓や一部中枢神経の重篤な低酸素を来しかねない。今回我々は、重症呼吸循環不全の症例に対し、veno-arterial-venous (vav) ECMOを治療介入当初に導入し、救命し得たので報告する。【臨床経過】症例は50歳代男性。以前より左室収縮能低下を認めており、拡張型心筋症が疑われていた。数日前の感冒様症状の出現の後、呼吸苦からの起坐呼吸、体動困難となり前医受診、両側の重症肺炎の診断で当院に救急搬送された。著明な低酸素血症を呈しており、ICUに収容後気管挿管し人工呼吸管理を開始したが、低酸素血症は持続した。心臓超音波検査では、左室は高度に拡大しEF 10-15 %程であった。機械的な呼吸・循環補助が救命には不可欠な状態と判断し、右大腿静脈脱血、送血回路はYコネクタで二股に分け、右大腿動脈送血、右内頚動脈送血によりvav ECMOを緊急導入した。右下肢の虚血予防のため、細径のカテーテルを右大腿動脈から順行性に挿入し、送血回路の枝より送血した。フローセンサーにより、脱血血液量、動脈と静脈のそれぞれの送血量や比を確認しつつ、患者病態に合わせて脱血量、送血分配比を調整した。抗菌薬投与、ステロイドパルス、また心不全に対する利尿剤などの薬物療法で呼吸・循環状態ともに改善したため、vav ECMOから離脱、ICU入室11日目にICU退室、入院29日目に独歩退院した。【結論】vav ECMOは動脈送血と静脈送血の比を調整することで、呼吸循環不全の症例の病態にあった呼吸循環補助を施行することができ、またva ECMOでのHarlequin syndromeの危険も回避できる。送血を分岐させ、カニューレ挿入部位も増えるためvv ECMOやva ECMOと比べるとやや回路が煩雑ではあるが、治療上のvav ECMOの利点は多い。重症呼吸循環不全の症例でのECMO導入の際は、vv ECMOやva ECMOからのスイッチとしてのvav ECMOではなく、先行してvav ECMOの回路を作成し、治療当初からvav ECMOを導入すべきと考える。