第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 研究

[P83] 一般演題・ポスター83
呼吸 研究02

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:50 ポスター会場1 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:門田 耕一(岡山大学病院 総合診療棟ICU/CICU)

[P83-4] Fontan術の抜管後におけるHigh-flow nasal cannula群と酸素マスク群の比較

池上 良子, 志村 ともみ, 水谷 結衣, 渡邊 裕美子, 松室 有希 (国立循環器病研究センター 小児科)

背景 Fontan手術後の呼吸管理において、2014年6月より、当院では High-flow nasal cannula (以下HFNC)を導入し呼吸管理を行ってきた。 現在、HFNCの使用の対象や、頻度は増加傾向であり、その効果も多数報告されている。しかし一方でガイドラインはなく、エビデンスも確立されていない。そのため、現時点では、どのような疾患に適切であるのか、安全性や有効性が明確にされていない。そこで、Fontan術の抜管後におけるHFNCの有用性を明らかにしたいと考えた。目的 Fontan術の抜管後における、HFNC群と酸素マスク群のICU滞在日数と経口摂取開始時間の差異を比較検証した。方法  対象は2011年1月から2016年3月までに国立循環器病研究センター集中治療部に収容されたFontan手術およびFenestrated Fontan手術症例48例とし、HFNC群21症例、酸素マスク群26症例を対象として後ろ向き観察研究を行った。1)以下の評価項目をHFNC群と酸素マスク群で比較した。年齢、性別、身長、体重、術前RVEF、Rp、PAP、PAindex、手術時間(分)、術中水分出納(ml)、抜管までの時間(分)、鎮静剤投与時間(分)、経口摂取開始までの時間(分)、ICU滞在日数(日)患児の保護者からのインフォームド・コンセント取得はオプトアウト方式で承諾を得ている。本研究は当院倫理委員会における審査を経て承認を得た(M28-043)。当該研究は利益相反状態にはない。結果 対象となった児の年齢は平均24か月(±8.5 14~60)であった。 身長 81.4cm ± 6.6、 体重 13.2 Kg ± 14.9、男児 26名、女児 21名であった。 抜管までの時間、手術時間、術中水分出納、鎮静剤投与時間において、酸素療法の違いによる統計的な差はなかった。肺動脈に関する指標の中でRp(肺血管抵抗指標)のみ、HFNC群1.139±0.46、マスク群1.54±0.68であり有意差がみられた(t =2.281, p =0.027)。経口摂取開始までの時間は、HFNC群、マスク群で有意差はなかった。ICU滞在日数はHFNC群8.35±5.12、マスク群5.70±2.45で有意に差があった(t = -2.353, p = 0.023)。結論 HFNCを使用することで、経口摂取開始時間とICU滞在日数が酸素マスク群より短縮されると予測されたが、経口摂取時間に有意差はなく、ICU滞在日数は長期となっていた。高濃度の酸素を末梢まで流すHFNCの効果を生かせるよう、今後、系統立てた看護ケアガイドラインの確立につなげていく。