第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P85] 一般演題・ポスター85
呼吸 症例07

Sun. Mar 3, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:石村 圭位(大阪市立総合医療センター)

[P85-2] 脳性麻痺・胃食道逆流症に対する気管切開・胃瘻造設術に際して呼吸管理に難渋した1症例

木村 太1, 竹川 大貴1, 丹羽 英智2, 橋場 英二2, 野口 智子1, 廣田 和美1 (1.弘前大学 医学部 麻酔科, 2.弘前大学 医学部 集中治療部)

【背景】脳性麻痺・胃食道逆流症に対する気管切開・胃瘻造設術に際して呼吸管理に難渋した1症例を経験したので報告する。【臨床経過】患者は14歳女児、120cm、17.1kg。在胎27週に帝王切開にて980gで出生、Apgarスコア4/6、新生児呼吸窮迫症候群、循環不全のために新生児ICUで全身管理を行った。脳出血を合併し、一般病棟に退出するまで100日以上を要した。脳性麻痺のため自力歩行不能、経鼻胃管から栄養管理を行ったが、胃食道逆流症のため誤嚥性肺炎を繰り返した。上気道閉塞も認めるようになったため、気管切開・胃瘻造設術が予定された。舌根沈下のため内径4.5mmの気管チューブを経鼻エアウェイとして挿入していないと窒息する状態であった。脊椎変形が著しく、分泌物も多量で持続吸引されており、麻酔導入に際しては挿管不能喚気不能に陥る可能性があった。自発呼吸を温存して経鼻エアウェイからファイバースコープで観察したが、分泌物が多く、披裂部が漸く見える程度であった。薄型のイントロックを装着したエアウェイスコープを何とか口腔内に挿入し、気管チューブにファイバースコープを通して、双方の画像を頼りに数人がかりで気管挿管することができた。手術終了後は十分に喀痰を吸引し、スガマデクスで筋弛緩拮抗を行って自発呼吸となるよう試みたが、呼吸パターンが悪く、高炭酸ガス血症となり、ICUで鎮静下の人工呼吸管理とした。ICU入室10時間後にはSIMVを外してPSVに変更できたが、分泌物過多で吸引を頻繁に行わなければならず、ミダゾラム、デクスメデトミジン、オピオイドを用いた鎮静の調整に難渋した。適切な鎮静状態で徐々にサポート圧を下げたが、呼吸パターンの悪化、頻呼吸により離脱が困難で、関連各部署と協議の結果、人工呼吸器装着のまま病棟帰室の方針となった。その後も綿密な呼吸管理を続け、サポート圧5cmH2Oでは呼吸パターンが悪化してしまうため、7cmH2Oから試験的にTピースにしてみたところ、時々頻呼吸は認めるものの、比較的安定した呼吸状態が保たれた。そのまま人工呼吸器を離脱することができ、入室4日後に自発呼吸下で一般病棟に退出した。【結論】脳性麻痺・胃食道逆流症で誤嚥を繰り返していた患者に対する全身麻酔では、細心の注意を払って気道確保を行う必要がある。気管切開により上気道閉塞が解除されても、呼吸パターンを安定させるには適切な鎮静の下、慎重に人工呼吸器離脱を図る必要があった。