第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P85] 一般演題・ポスター85
呼吸 症例07

Sun. Mar 3, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:石村 圭位(大阪市立総合医療センター)

[P85-4] 超音波で診断し得たリウマチ性関節炎による両側声帯運動障害の一例

西周 祐美, 吉田 拓也, 出井 真史, 福井 公哉, 佐藤 暢夫, 清野 雄介, 石川 淳哉, 中川 雅史, 野村 岳志 (東京女子医科大学病院 集中治療科)

【背景】リウマチ性関節炎は様々な関節腔の滑膜に慢性的な炎症をきたし、関節の可動域制限を障害する。披裂軟骨に炎症が波及すると声帯の可動域が制限され、両側に炎症が及ぶと両側声帯麻痺となるが報告は少ない。今回、CO2ナルコーシスを発症した症例で、両側声帯運動障害を体表からの喉頭超音波で診断し得た症例を経験したので報告する。【臨床経過】60歳台、女性。関節リウマチで当院通院中であり、メトトレキサート、プレドニンの内服でコントロールされていた。外来受診1週間前より発熱、咳嗽が出現、食欲低下、ふらつき等を認めており、外来受診時に肺炎の診断で入院となった。入院翌日の朝に意識障害が出現した。動脈血ガスでPaCO2 94mmHgと上昇を認め、CO2ナルコーシスの診断で気管挿管を施行しICU入室となった。挿管時にはCO2ナルコーシスに至った原因は不明であった。肺炎の改善を認めたためICU入室2日目に抜管したところ、すぐに上気道狭窄音、呼吸困難が出現した。喉頭超音波で両側の声帯がほぼ正中で固定されており、動いていないのが確認できた。気管支鏡も同様の所見であった。両側声帯運動障害と診断し、再挿管を行った。CO2ナルコーシスの原因も両側声帯運動障害が原因と考えられた。ICU入室12日目に気管切開を施行し、ICU入室14日目にICU退室となった。【考察】リウマチが輪状披裂関節に波及すること自体はまれではないが、通常は片側のみで喉の違和感、嚥下痛、嗄声等の症状を呈することが多く、本症例のように両側性の発症はごく稀である。リウマチ性輪状披裂関節炎は感冒や気管挿管を契機に増悪するといわれており、本症例では肺炎を契機に急性増悪したと考えられた。また肺炎・発熱による意識レベルの低下、睡眠といった状況が重なりCO2ナルコーシスを来したと考えられる。本症例では抜管後に超音波で声帯の動きを観察したことで診断し得たが、初回の気管挿管前に喉頭超音波を施行すれば早期に診断し得た可能性もある。関節リウマチによる声帯運動障害は増悪するまで症状の訴えが少なく診断も難しいが、本症例のような急速な症状増悪を認めることがあるため、常に考慮する必要性を感じた。また気道緊急の診断に超音波は有用であると考えられる。