[P90-1] 早期離床に難渋した高位脊髄損傷患者における取り組み
【背景】早期リハビリテーション(以下、リハ)の現場において高位脊髄損傷患者の離床はスパイナルショックや肺炎などの呼吸器合併症、起立性低血圧などにより難渋することが多い。今回、リハアプローチ中に頻繁に出現する徐脈や、ヘッドアップ時の1回換気量低下および呼吸数増加、呼吸困難感を認めた高位脊髄損傷患者に対して自動調節能の早期獲得と人工呼吸器からの離脱を目的にTilt tableを用いた起立訓練を実施し一定の効果を得たので報告する。 【臨床経過】頚椎症性脊髄症の既往をもつ67歳男性。自宅の階段より転倒し受傷、通行人にて救急要請され当院搬送。MRI上、C4-5脊髄損傷を疑われ、即日緊急でC2ならびにC5部分椎弓切除、C3~C4椎弓形成術が施行された。術後1日目よりリハ開始。ASIA分類A。初回介入時から体位変換や吸引刺激にともなう高度の徐脈および心停止を認め、それは第12病日まで持続し、その間は積極的な離床は困難であった。スパイナルショック離脱後より自動調節能の再獲得や人工呼吸器からの離脱を目的とした訓練を開始したがヘッドアップ位において腹部膨隆を背景とした1回換気量の低下および呼吸数増加、呼吸困難感を認めヘッドアップ以外の離床手段を検討する必要があった。そこでTilt tableを用いた起立訓練を開始した。Tilt tableのセッションは5回実施できた。結果、第30病日には端座位、第31病日にはティルト付きリクライニング車椅子への離床が可能となった。第33病日に一般病棟へ転床となったが人工呼吸器からの離脱には至らなかった。 【結論】当症例に対してTilt tableを用いた離床訓練はヘッドアップによる腹部膨隆を背景とした1回換気量の低下などの呼吸への影響を最小限にし車椅子座位の獲得に有効であったと考える。