第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

リハビリテーション 症例

[P91] 一般演題・ポスター91
リハビリテーション 症例04

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:50 ポスター会場9 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:安村 里絵(東京都済生会中央病院 麻酔科)

[P91-3] 終末期患者との関わりを通じて、明らかにされたICU看護師の役割とリハビリテーションの意義

秋山 正乃, 片山 直記, 十鳥 依利子, 藤田 智和, 増田 善昭, 石川 智也 (藤枝市立総合病院 集中治療室)

背景:一般的に慢性呼吸器疾患の終末期では、呼吸機能が著しく低下し、るい痩や筋力低下など全身症状が認められ、日常生活においても活動が大きく制限されている。そのため、救命のため余儀なく気管挿管・人工呼吸器管理となった患者にとって、人工呼吸器離脱は大きな障壁となり、患者のQOLは低下する。今回、慢性期疾患の終末期患者一症例のリハビリテーション(以下リハとする)を通して、ICU看護師の役割とリハの意義について学んだため、ここに報告する。
臨床経過:60歳代、男性、家族構成:息子と2人暮らし。3か月前から肺アスペルギルス症で呼吸器内科入院中、喀血し、呼吸状態悪化。本人は積極的な治療を望んでいなかったが、家族の希望でBEA(気管支動脈塞栓術)施行し、ICU入室。2日目、無気肺にてCO2ナルコーシス、意識レベル低下。家族に挿管の同意を得て、人工呼吸器開始となる。3日目、腹臥位実施。4日目、90分自発呼吸モード(以下SBT/自発呼吸トライアルとする)開始。7日目、端座位実施。SBT60分実施。8日目、端座位実施。立位意欲あり歩行器使用し立位実施。11日目、1日3回シャーベット経口摂取開始、笑顔あり。13日目、喀血にて呼吸状態悪化。
結論:長期に渡る入院生活のなかで、患者は改善しない病状や呼吸困難感にいらだち、医療者に不満をぶつけることもあった。また、積極的な治療を望んでいない患者にとって、リハが受け入れられるか不安があった。しかし、患者は7日目の離床を境に意欲的にリハに取り組む姿勢を見せた。慢性呼吸器疾患の患者にとって短期間でSBTの成果を得ることは困難である。そのため、活動によるアプローチを併用して行うことで、自己効力感が高まり、自分自身と向き合い始めたと考える。そして患者は、自分自身と向き合い現実を見つめることで、これから自分らしくどう生きるかを考え始めたと感じた。安部氏はリハは「QOL改善の手段」と述べている。それを支えるため看護師は人間としての基盤となる生理的欲求や安全の欲求が満たされているか確認することが必要となる。そして、その患者の希望の把握はバイタルサインなどの客観的指標では把握できず、患者との対話による所見の把握が必要不可欠と言われている。看護師は制限のある環境下でも、その人らしさを尊重した生活が送れるように、他職種と連携を取りながら調整することが必要となる。