[P91-5] 急性呼吸不全後の抜管困難症に対し、歩行訓練を含む運動療法を行い呼吸器離脱した先天性ミオパチーの小児例
【背景】近年、成人では、挿管下人工呼吸管理中の歩行練習を含めた積極的な運動療法が人工呼吸器離脱を促進すると共に、身体機能の再獲得に有用な可能性が示唆されている。一方、小児では治療への協力が得られにくいという背景があり、人工呼吸中の歩行練習を含めた運動療法の安全性と有用性に関する報告はない。今回我々は、急性肺炎による呼吸不全から抜管困難となった先天性ミオパチーの小児例に対して、立位・歩行練習も含めた運動療法を行い呼吸器離脱に成功した症例を経験したため報告する。【症例】先天性ミオパチーを有する3歳男児で、筋力低下を認めるが、日常生活では歩行、食事、会話が可能である。急性肺炎とのため前医へ入院となった後、低酸素血症と呼吸様式の悪化を認め、気管挿管下に当院PICUへ転院搬送となった。PICU入室後、人工呼吸管理下に抗菌薬加療を継続し、急性肺炎の改善に合わせて静脈鎮静を漸減、呼吸器のウィーニングを行い、入院6日目に抜管とした。しかし、陥没呼吸と多呼吸が徐々に増悪し、抜管後2時間で再挿管を要した。臥床による廃用に伴う筋持久力低下、咳嗽による自然排痰困難が抜管失敗の原因と考えられ、筋疾患を背景も合わせて、抜管困難症に対して気管切開を要する可能性も考慮された。再挿管後、経鼻挿管に変更の上、 日勤帯の鎮静中断と理学療法士同伴の積極的な運動療法を開始した。鎮静中断時は、動作による意思疎通が可能な状態であった。段階的に、座位、立位、歩行と運動強度を上げ、入院16日目には人口鼻管理下での歩行が可能となった。経過中に事故抜管等の有害事象はなかった。呼吸機能検査でも、最大吸気圧と肺活量の改善を認め、入院21日目に抜管とし、high flow nasal cannula (HFNC)で安定が得られた。HFNC離脱後にPICU退室、一般病棟管理を経て、歩行可能な状態で自宅退院となった。【考察】筋疾患を背景としながらも、意思疎通が可能な幼児期の症例に対して、鎮静中断と運動療法を安全に実施し、呼吸器離脱に成功した症例を経験した。小児においてもICU管理に伴う筋力低下による抜管困難が想定された際、歩行訓練も含めた積極的な運動療法が有効な場合があり、適切な症例の選定や理学療法士も含めた多職種の連携が重要と考える。