[P91-6] ICUベッドを用いたヘッドアップチルト位にて経過が良好であった病的肥満肺炎患者の1例
【はじめに】病的肥満患者の人工呼吸器管理における体位は、座位や腹臥位が有効であったとする報告がある。しかし、病的肥満患者では体型的な制限により座位や腹臥位を取ることが困難となることが多い。今回、ICUベッドを用いたヘッドアップチルト位を行うことで良好な経過をたどった症例を経験したので報告する。【症例】43歳男性。身長167cm、体重179kg、BMI 64。既往に高血圧、高尿酸血症.4日前から発熱、全身倦怠感が出現していた。入院前日からの呼吸困難のため当院救急搬送となった。来院時、胸部単純X線にて両側下肺野の浸潤影とCRP 8.6mg/dl、WBC 13570/μlと炎症反応の上昇を認めており肺炎と診断した。血液ガス検査ではFiO2 1.0下でpH 7.167、PaO2 93.3mmHg、PaCO2 104mmHg、低酸素血症と呼吸性アシドーシスを認めており緊急気管挿管、人工呼吸器管理を開始した。人工呼吸管理後はアシドーシスの改善は認めたが入院3日目になってもFiO2 1.0、PEEP 18cmH2OにてPaO2 56.4mmHgと低酸素血症の改善は認めなかった。座位にすると呼吸回数の増加とPEEPプラトー圧30cmH2O以上となり座位保持ができず、胸部X線での肺炎評価は体型的な問題で困難であった。入院4日目よりICUベッド)を用いた体位管理と早期離床を目的としたリハビリを行った。医師1名と理学療法士1名を必須とし看護師を含めた計6名体制で行った。ICUベッドの傾斜をつけていき、両下肢に荷重がかかるようにヘッドアップチルト位をとるようにした。リハビリ初日は自重のみとした。リハビリ中は鎮静を浅くし、CPAPでの呼吸管理とした。SpO2値を指標として人工呼吸器設定を変更し、リハビリ終了直後の血液ガスはFiO2 0.4、PEEP 20mmHgでPaO2 58.2mmHgであった。1日2回20分間同体位を実施し入院9日目からは足踏み訓練を追加した。入院11日目、抜管前にICUベッドを変更し抜管後に自力座位からの立位訓練へと移行する方針とした。入院20日目に経過良好にて自力歩行で退院となった。【考察】本症例ではICUベッドを用いたヘッドアップチルト位を行うことで合併症を起こすことなく比較的早期に退院することができた。今回我々が行った方法は座位や腹臥位困難な肥満患者であっても安全に行うことができ有益である。