[P92-6] 心臓MRI撮影中に機器による圧迫・息止め等で呼吸不全が生じ心停止になった1症例
【背景】心臓MRI撮影中には撮像画像の感度を上昇させるために心臓直上の体表面にコイルを置き,さらに呼吸性変動で画像がぶれないようにするために撮像時に息止めやバンドで胸部を固定する必要がある。今回,我々は重篤な拘束性換気障害がベースにある患者が心臓MRI撮影中にバンドやコイルによる圧迫や息止めを繰り返したことにより急性呼吸不全を呈し,心停止となった症例を経験したので報告する。【臨床経過】重症筋無力症を合併した胸腺腫に対して拡大胸腺腫摘出後に左横隔神経麻痺から拘束性換気障害となり,在宅酸素療法導入されていた53歳男性。心機能低下が認められたため,当院循環器科を受診し,診察にて心臓サルコイドーシスを疑われた。精査のため心臓MRIを撮影された際,胸部をバンドやコイルで圧迫され10秒程度の息止めを5回繰り返した直後に呼吸困難感を自覚し呼び出し用のブザーを鳴らした。この時のSpO2は60%まで低下しており,院内救急コールとなった。救急科医師が到着してほどなくして呼吸停止,無脈性電気活動となり直ちに心肺蘇生を開始した。アドレナリン計3mgを静脈投与し,7回目のリズムチェックの際に心拍再開した。直近の心臓CTでも冠動脈病変を認めておらず,造影CTでも心停止の原因は判明しなかった。体温管理療法を施行し,意識レベルは晴明となり神経学的後遺症は認めなかった。抜管後にMRI撮影中のことを聴取すると,MRI撮影中のバンドやコイルによる胸部圧迫,息止めがかなりの負担となり呼吸困難を生じたとのことであった。【結論】左横隔神経麻痺により%肺活量25%と高度の拘束性換気障害がある患者に、MRI撮影時のバンドやコイルによる胸部圧迫や息止めを繰り返したことで,低換気から呼吸停止,心停止になったと考えられた。高度な拘束性換気障害を有する患者に心臓MRIを撮影する際は,重篤な呼吸不全を呈する可能性があるため,注意を要すべきである。