[P93-1] 院内における気管挿管の成否と合併症発生に関連する要因の検討
【背景】
気管挿管の成否と合併症発生には様々な要因が関与しているが,手術室以外の院内全体での気管挿管に関する研究はこれまでほとんどない.
【目的】
手術室以外の院内全体の気管挿管の成否と合併症発生に関連する要因を調査する.
【方法】
当院では手術室・NICUを除いた院内での気管挿管の実施記録を電子カルテに記録しており,2016年4月から2018年3月までのデータを抽出した.初回気管挿管の成否と合併症の有無を目的変数とし,年齢,性別,挿管困難因子の有無(BMI 30 kg/m2以上・外見上の異常・開口2横指以下・気道閉塞・頚部伸展制限),挿管場所(救急救命室・集中治療室か病棟・外来か),挿管実施者(指導医か研修医か),挿管器具(直視型喉頭鏡かビデオ喉頭鏡か),筋弛緩薬投与の有無を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った.P<0.05を統計学的有意とした.合併症は嘔吐,誤嚥,歯牙・口唇損傷・鼻出血,気道の損傷,食道挿管,主気管支挿管,低酸素血症(SpO2<90 %),低酸素血症に伴う心停止・死亡とした.
【結果】
研究対象期間で1162例の気管挿管が行われた.年齢の中央値は70歳(四分位値:53歳-79歳)であり,男性712例(61 %),女性450例(39 %)であった.BMIは中央値22.0 kg/m2(19.5 kg/m2-24.3 kg/m2)であった.挿管場所は集中治療室が403例(35%),救急救命室687例(59%),外来・病棟72例(6%)であった.気管挿管の適応は気道の異常113例(10%),呼吸の異常301例(26%),循環動態の異常226例(19%),意識障害190例(16%),心停止116例(10%),その他216例(19%)であった.初回挿管失敗は186例(16 %)であり,合併症は65例(5.6 %)であった.初回挿管失敗に有意に関連する要因は挿管困難因子有り(オッズ比1.88; 95%信頼区間 1.36-2.59,P<0.001),研修医実施(2.52; 1.75-3.65,P<0.001),直視型喉頭鏡(1.74; 1.15-2.64,P=0.009),筋弛緩薬不使用(1.43; 1.01-2.01,P=0.043)であった.合併症に有意に関連する要因は研修医実施(1.83; 1.04-3.23,P=0.037),直視型喉頭鏡(2.00; 1.09-3.65,P=0.025),病棟・外来での挿管(2.49; 1.05-5.87,P=0.038)であった.
【結論】
初回挿管失敗と合併症の両方に関連する要因は研修医実施と直視型喉頭鏡の使用であった.初回挿管失敗のみに関連する要因は挿管困難因子を有することと筋弛緩薬不使用があり,合併症のみ関連する要因として病棟・外来での挿管があった.
気管挿管の成否と合併症発生には様々な要因が関与しているが,手術室以外の院内全体での気管挿管に関する研究はこれまでほとんどない.
【目的】
手術室以外の院内全体の気管挿管の成否と合併症発生に関連する要因を調査する.
【方法】
当院では手術室・NICUを除いた院内での気管挿管の実施記録を電子カルテに記録しており,2016年4月から2018年3月までのデータを抽出した.初回気管挿管の成否と合併症の有無を目的変数とし,年齢,性別,挿管困難因子の有無(BMI 30 kg/m2以上・外見上の異常・開口2横指以下・気道閉塞・頚部伸展制限),挿管場所(救急救命室・集中治療室か病棟・外来か),挿管実施者(指導医か研修医か),挿管器具(直視型喉頭鏡かビデオ喉頭鏡か),筋弛緩薬投与の有無を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った.P<0.05を統計学的有意とした.合併症は嘔吐,誤嚥,歯牙・口唇損傷・鼻出血,気道の損傷,食道挿管,主気管支挿管,低酸素血症(SpO2<90 %),低酸素血症に伴う心停止・死亡とした.
【結果】
研究対象期間で1162例の気管挿管が行われた.年齢の中央値は70歳(四分位値:53歳-79歳)であり,男性712例(61 %),女性450例(39 %)であった.BMIは中央値22.0 kg/m2(19.5 kg/m2-24.3 kg/m2)であった.挿管場所は集中治療室が403例(35%),救急救命室687例(59%),外来・病棟72例(6%)であった.気管挿管の適応は気道の異常113例(10%),呼吸の異常301例(26%),循環動態の異常226例(19%),意識障害190例(16%),心停止116例(10%),その他216例(19%)であった.初回挿管失敗は186例(16 %)であり,合併症は65例(5.6 %)であった.初回挿管失敗に有意に関連する要因は挿管困難因子有り(オッズ比1.88; 95%信頼区間 1.36-2.59,P<0.001),研修医実施(2.52; 1.75-3.65,P<0.001),直視型喉頭鏡(1.74; 1.15-2.64,P=0.009),筋弛緩薬不使用(1.43; 1.01-2.01,P=0.043)であった.合併症に有意に関連する要因は研修医実施(1.83; 1.04-3.23,P=0.037),直視型喉頭鏡(2.00; 1.09-3.65,P=0.025),病棟・外来での挿管(2.49; 1.05-5.87,P=0.038)であった.
【結論】
初回挿管失敗と合併症の両方に関連する要因は研修医実施と直視型喉頭鏡の使用であった.初回挿管失敗のみに関連する要因は挿管困難因子を有することと筋弛緩薬不使用があり,合併症のみ関連する要因として病棟・外来での挿管があった.