[P94-4] 経口抗凝固薬服用患者への静注用人プロトンビン複合体製剤の当院における使用状況調査
【背景】当院では、ビタミンK拮抗薬(ワルファリンカリウム)または経口FXa阻害薬(アピキサバン、エドキサバンおよびリバロキサバン)服用患者の緊急手術や重篤出血時の速やかな止血を目的に静注用人プロトンビン複合体製剤(Prothrombin Complex Concentrate:PCC)を使用している。これら患者に対してPCCを使用する必要性は高いが、これら製剤の使用実態調査の報告は少なく、有効性および安全性に関するデータは乏しい状況にある。そのため、PCCの使用実態調査は必要である。【目的】ビタミンK拮抗薬または経口FXa阻害薬を服用中にPCCを投与した患者を対象とし、PCCの有効性および安全性を検討した。【方法】対象は2017年1月~2018年7月にPCCを投与されたビタミンK拮抗薬または経口FXa阻害薬服用患者。対象患者へのPCCの投与量、患者背景や臨床検査値などをカルテ後方視的に調査した。なお、経口FXa阻害薬服用患者へのPCCの使用については、院内委員会にて承認済。【結果】症例は30例。年齢は74.8±10.4歳。服用していた抗凝固薬の内訳は、ワルファリンカリウム17例、アピキサバン5例、エドキサバンおよびリバロキサバン各4例。体重は54.7±9.9(35~71.5)kg。PCCの適応疾患は、脳出血11例、緊急手術前の拮抗8例、消化管出血7例、その他の出血2例、その他2例。PCC投与量は2,340±952(1,000~3,500)単位。PCC投与前後のPT-INRは、投与前が2.52±1.82(1.06~8.78)、投与15~30分後が1.32±0.32(0.89~2.25)と速やかに基準値内へ是正されたが、4例で投与後に検査値の上昇が認められた。止血目的の症例では、4例が投与後24時間の時点では出血の改善が認められなかった。手術前の拮抗を目的にした症例では1例、術中の止血に難渋した症例があった。なお、全症例において、PCCによる血栓症やその他の副作用は認められなかった。【結論】今回の調査において、ほとんどの症例でPT-INRの速やかな是正および出血の改善傾向が認められた。また、PCC投与による有害事象は認められなかった。しかしながら、出血が改善していない症例もあり、今後さらなる検証が必要であると考える。