第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

外傷・熱傷

[P95] 一般演題・ポスター95
外傷・熱傷02

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:40 ポスター会場13 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:朱 祐珍(京都大学大学院薬剤疫学分野)

[P95-4] 頸椎骨折患者に気管切開が必要となる因子の解析

日下部 賢治 (大阪府 泉州救命センター)

目的 頸椎損傷患者に対して気管切開に関与する因子について分析し、早期手術が気管切開を回避する因子となりうるかを検討した。方法2003年10月から2017年2月の期間にかけて、当三次救命センターに搬入された患者の外傷データーベースを逆行性に検索し、頸椎および頸髄損傷の診断名が得られた301例を抽出した。その患者群から、気管切開の有無について検索し、気管切開に影響を与える因子について検討した。入院から脊椎の手術日、搬入時の四肢のMMTの最低値、GCS値、ISS値、ハローベスト治療の有無により比較検討を行った。結果 対象患者は301名、うち男性221名、平均年齢は54.8歳であった。24名が治療中に死亡した。ハローベストは50名に使用され、31名が搬入日に装着、設置までの平均時間は1.0日であった。ハローベストの設置は、重度の頭部外傷がない患者で、不安定性が高い場合に臨床医の判断で設置された。救命センターに入院中、頸椎の手術治療を行ったのは17例、手術までの待機時間は平均7.2日であった。気管切開は54名に適応され、気管切開までは平均7.2日であった。多変量解析では、手術時期と気管切開との関連は認めず、初期の麻痺の程度とハローベストの装着、ISS値が気管切開に関連する因子として検出された。初期の四肢の麻痺でMMT4以上である患者では、気管切開が必要な症例は認められなかった。考察 逆行性の検索であること、また、当センターから急性期転院例では、後に転院先で手術介入があったかを評価ができない点に解析の限界がある。また、手術例が17例と少数であった点も、十分な結果を得るに不足していた。さて、急性期の頸椎骨折手術による姿勢制限の解除は、早期リハビリテーションを可能とし、気管切開を回避する可能性があると考えている。ハローベストは構造上、胸郭の動きを制限する可能性がある。状態が許す限りの早期の内固定が、気道管理も含めた集中治療に有益ではないかと考えたが、この度の報告では、有意な結果は得られなかった。また、この度の結果では、初期に麻痺および外傷の重症度が高い場合には、気管切開を回避できない傾向が認められ、早期の気管切開が集中治療室での管理上、有益と判断する根拠になりうる。