第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

外傷・熱傷

[P95] 一般演題・ポスター95
外傷・熱傷02

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:40 ポスター会場13 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:朱 祐珍(京都大学大学院薬剤疫学分野)

[P95-5] 外傷患者の診療における全身観察とアセスメントからの検証

平尾 尚也, 須賀 璃奈, 長見 由美 (広島市立安佐市民病院 看護部)

【背景】当院は広島県北部、島根県南部の広域医療圏における地域拠点病院として、1次から3次救急の受け入れをしており、救急搬送患者の中には多くの外傷患者も含まれる。その診療では、直ちに患者の生理学的評価をし、問診や系統的な全身観察を継続して行う事で、異常を見逃さない事が求められる。現在当院の救急外来経験年数3年以下の看護師は半数以上であり、外傷患者対応の経験や知識が十分ではない現状がある。今回、受傷機転や症状から起こりうる病態が帰宅後や入院後に発覚した事例があった。このことから救急外来看護師として外傷患者の全身観察や、診療医師との協働について考える機会となったため報告する。【臨床経過】〈症例1〉70代男性。自動車同士の衝突事故で山間部の病院へ救急搬送され、右鎖骨骨折と診断されたが、軽度見当識障害を指摘され頭部CT目的で当院へ転院搬送となった。来院時は意識清明、頭部CTで出血を認めず。腹痛の訴えあるも腹部エコーにて明らかなfree airなし。意識障害の原因は脳震盪とし帰宅となった。翌日、腹痛持続するため再来院。右側腹部にシートベルト痕あり。腹部造影CTにて小腸穿孔による腹膜炎とわかり緊急手術となった。〈症例2〉60代女性。自転車同士の衝突事故。頭部外傷の情報で救急搬送。来院時意識清明。顔面に挫創と皮下血腫あり。転倒時にハンドルで腹部を打撲し腹痛の訴えあり。全身に打撲痕なし。FAST陰性。頭・腹部のCT撮影し明らかな所見なく帰宅の方針で検討していた。しかし受傷機転を考えると来院から2回嘔吐し、腹痛持続しているため看護師から医師へ入院を提案し、経過観察で入院となった。翌日のCTで右後腹膜に広範囲のfree airあり、消化管穿孔の疑いで緊急開腹手術となった。【結論】2つの症例共に外傷で搬送後、一度は帰宅の方針となったが後から臓器損傷が明らかになった例である。この事から患者の訴えや目に見える外傷のみに囚われず、受傷機転から起こりうる病態を予測して系統立てた全身観察を行うことが必要である。救急外来看護師は、たとえ経験年数が短くても経験豊富な看護師を中心に、外傷症例の振り返りや勉強会を行い、部署全体のレベル向上に努める事が求められる。そして必要に応じて経過観察入院を医師へ提案し検討できるなど、医師と共通認識を持ち協働していくことが重要であると考える。