[P96-2] 大腿骨骨折術後の意識障害で発見された難治性高カルシウム血症の一例
【背景】高カルシウム血症(以下高Ca血症)による意識障害は輸液加療で軽快することが多い。今回、輸液療法が効果無く、血液透析を併用しても難治性で、原因同定に難渋した症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は70歳女性。近医にて多血症の診断後、二次性骨髄線維症で加療中であった。某年6月上旬に転倒し近医受診、左大腿骨骨幹部骨折にて当院紹介入院となった。軽度腎機能低下あり、補液で経過観察、第4病日骨折部プレート固定が行われた。術翌日から徐々に傾眠傾向となり、リハビリ中も眠ることが多くなった。第11病日Cr2.8mg/dlと腎機能の悪化を認めた。高Ca血症(14.9mg/dl)が原因と考えられ、補液による治療を開始するもCa値の改善はなく、第17病日、集中治療部にコンサルトとなった。急性腎障害を認め、ビスフォスフォネート製剤が投与できず、脱水補正、エルカトニン・フロセミド投与を行った。第18病日、頸部超音波検査で副甲状腺腫を認め、原発性副甲状腺機能亢進症と考えシナカルセトも併用した。しかしCa値は改善無く、腎機能はさらに悪化し意識障害も続いた。第19病日、右下肢痛精査の結果、右大腿骨骨幹部骨折を認めた。高Ca血症の原因として悪性疾患を検索するも原因不明であったが、骨折部のCT所見からは悪性疾患による病的骨折が考えられた。高Ca血症は治療抵抗性であり、同日、血液透析を導入した。透析終了後iCa 1.70mmol/Lまで低下するも翌日朝には1.90mmol/Lまで上昇し、デノスマブも併用した。デノスマブ投与1週間後にCaは正常化、腎機能も徐々に改善、意識清明となり、第23病日 右大腿骨プレート固定術を施行、第26病日 透析を離脱した。PTHrP1.5pmol/Lと高値であり、何らかの悪性疾患が原因と疑われたが、画像検索範囲では原発不明であり、血液内科に転院待ちの状態であった。第37病日、発熱と意識障害が再燃、頭部CTで急性硬膜外血腫を認め、緊急開頭血腫除去術となった。術中所見では硬膜外に骨破壊を伴う腫瘍性病変があり、同部の病理組織の結果、びまん性大細胞型B-cell非ホジキンリンパ腫と判明した。【結語】意識障害を呈し、透析併用の管理が必要であった難治性高Ca血症の原因検索に苦慮した症例を経験した。難治性高Ca血症の原因としてリンパ腫などの血液疾患の鑑別も重要と思われた。