[P98-2] 肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症患児に、ラステリ手術と同時に予防的気管支外ステント術を施行した一例
【背景】肺動脈弁欠損症(APV)は、肺動脈弁の低形成と肺動脈の拡張を特徴とする疾患であり、拡張した肺動脈による気道系の圧迫が問題となる。圧迫は胎児期から認められるため、すでに気道そのものの変形や、軟骨の形成不全などを合併している場合もあり、気道病変に対する治療が必要になることもある。今回、ラステリ手術と同時に予防的気管支外ステント術を施行し、呼吸状態改善に寄与した一例を経験したので報告する。【症例】4ヶ月男児。在胎32週でファロー四徴症とAPVを指摘された。在胎39週2日、体重2658gで、胎児機能不全のため緊急帝王切開術で出生した。Apgar scoreは3点/7点(1分後/5分後)であり、努力呼吸とチアノーゼが持続するため、生後10分で気管挿管、人工呼吸管理とし、新生児集中治療室(NICU)に入室した。胎児期より、肺動脈の拡張による気管の圧迫が認められたが、気管支ファイバースコピー(BF)、造影CT検査による評価を行った上で、日齢6で抜管した。その後、手術までの4ヶ月間、nasal high flow(NHF)を必要とした。日齢46でNICUを退室し、心臓手術のために体重増加を待った。日齢146、3844gでラステリ手術、肺動脈弁形成、左気管支外ステント術を施行した。術中施行したBFでは、左主気管支はほぼ閉塞していたが、ステント留置後は内腔の開存が確認できた。術後は人工呼吸管理下で集中治療室(ICU)に入室した。術翌日のBFでは、左主気管支入口からほぼ完全閉塞しており、粘膜腫脹の影響が疑われた。術後2日目に陽圧下CT検査を施行したが、呼気終末陽圧(PEEP)を高くしても内腔の拡張は認められなかったため、アドレナリン吸入、デキサメタゾン点滴静注に加え、フロセミド持続静注による水分管理も行った。術後6日目のBFによる再評価では、左主気管支の内腔は保たれていたため抜管し、非侵襲的陽圧換気(NPPV)管理とした。術後7日目にICUを退室し、術後12日目にはNPPVを離脱し、酸素投与も終了した。その後の呼吸状態に大きな問題はなく、術後25日目に自宅退院となった。【結論】本症例では、術後も拡張した肺動脈による気道への圧迫解除が見込めなかったため、ラステリ手術と同時に予防的気管支外ステント術を施行した。術前はNHFからの離脱が困難であったが、術後は酸素不要で自宅退院が可能となった。肺動脈拡張を伴うAPVにおいて、気管支外ステントは気道の直接圧迫を防ぐことができ、呼吸状態改善の有効な治療法の1つとなりうる。