[P98-3] 無脾症、肺静脈狭窄を伴う総肺静脈還流異常症に対しステント留置後、心内修復術を行った1症例
【背景】肺静脈狭窄(PVO)を伴う総肺静脈還流異常症(TAPVC)は、肺鬱血症状が強く早期の治療介入が必要となる。無脾症では機能的単心室が多く、早期に手術を行っても予後不良である。今回、無脾症、TAPVC、PVOを認めた重症症例で、生後早期にPVOに対しステント留置後、外科的修復術に至った症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は4か月の男児。在胎30週の胎児心臓超音波検査でTAPVCを疑われた。在胎37週6日、2051 g、予定帝王切開術で出生した。Apgar score 8/8(1分後/5分後)、出生直後に啼泣はあったが、face maskで酸素投与するも動脈血酸素飽和度:60%台と著明な低酸素血症を認めたため、気管挿管、人工呼吸管理を行い新生児集中治療室に入室した。経胸壁心臓超音波検査で無脾症、下心臓型TAPVC、PVO、単心房、完全房室中隔欠損、軽度左室低形成、両大血管右室起始、肺動脈狭窄、右側大動脈弓を認めた。肝静脈流入部で垂直静脈の狭窄を認め、径1.4 mmと重度の狭窄であった。造影CT検査も同様の所見であり、出生後1時間でステントによるPVO解除目的のカテーテル治療を行った。狭窄部前後の圧較差は15 mmHgであったが、ステント留置後は4 mmHgに改善した。その後は安定していたが、覚醒時に肺動脈弁下の狭窄病変進行による低酸素発作を繰り返したため、完全鎮静、長期挿管管理で体重増加を図った。体重2378gとなり、日齢65でTAPVC根治術、肺動脈弁下筋切除を行い、肺血流を調節するため肺動脈絞扼術を施行した。術後は開胸のまま集中治療室(ICU)に帰室し、術後12日目に閉胸した。低体重かつ鎮静管理が長期間に及び、人工呼吸器の離脱に時間を要したが、日齢121に抜管し、日齢128にICUを退室した。一般病棟でも非侵襲的陽圧管理を継続しているが、自然気道での高流量酸素投与の時間を徐々に増やし、自宅退院を目指している。【結論】無脾症、重度のPVOを伴うTAPVCの症例では早期の治療介入が必要となるが、早期外科的治療の手術成績が良好ではない。本症例では低出生体重児かつ呼吸循環動態が不安定な状況下にあったため、初回治療は侵襲度の低いカテーテル治療を選択した。出生直後の外科的修復術を避け、カテーテル治療により体重増加が得られるまでの時間を稼ぐことができ、段階的に外科的修復術を行えたことで救命できたと考えられた。