[P98-4] NTproBNPは小児心臓手術後のAKI発症予測因子である
【背景】小児でも急性腎障害(Acute Kidney Injury: AKI)の発症が、予後を悪化させることが明らかとなってきた。成人ではAKI発症の予測因子が多く報告されているが、小児については不明な点が多い。成人で一般的に心不全のマーカーとして知られるNTproBNPは、小児においても予後予測に有用であり、また腎機能との関連性も注目されている。【目的】小児心臓手術患者の術後のNTproBNP値により、AKI発症を予測できるかどうかを明らかにすること。【方法】[研究デザイン] 単施設後ろ向き観察研究。(当大学管理番号60-18-0027)[対象患者] 2016年から2017年に当院で心臓手術を受けた15歳以下の心臓手術患者。[データ収集] 年齢、性別、術式、人工心肺使用の有無、ICU入室時と入室翌日のNTproBNP値、術前および術後7日間のクレアチニン値、ICU入室後24時間の1時間ごとの尿量。データ欠損のある患者は除外した。AKIの診断にはKDIGOの診断基準を用いた。[主要評価項目] ICU入室時のNTproBNP値もしくは入室翌日のNTproBNP値とAKI発症の相関。[副次評価項目] 患者年齢、性別、人工心肺の有無とAKI発症の相関およびAKI発症群(AKI群)と非発症群(non-AKI群)のパラメーターの比較。[統計学的手法] NTproBNP値、その他のパラメーターとAKI発症の相関の検定にはピアソンの積率相関およびロジスティック回帰分析を適応。両群間の比較にはマンホイットニーのU検定、χ二乗検定を用いた。【結果】解析対象47名、うち男児25名。年齢の中央値は0.95才。人工心肺使用は29例。AKIの発症率は25.5%(12名/47名)で、重症度はそれぞれStage1:6名, Stage2:5名, Stage3:1名。単変量解析の結果、ICU入室時のNTproBNP値よりも入室翌日のNTproBNP値の方がAKIの発症と強く相関していることが示唆された。ロジスティック回帰分析でも入室翌日のNTproBNP高値はAKI発症の独立したリスク因子であった。患者年齢、性別、人工心肺の有無については、AKI発症群と非発症群の間に有意差は認めなかった。【結論】小児心臓手術を行った患者では、手術翌日のNTproBNP値からAKI発症を予測することができる。