第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P98] 一般演題・ポスター98
新生児・小児03

Sun. Mar 3, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:澤田 奈実(日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野)

[P98-6] 小児ECMO導入患者に下大静脈フィルターを留置した2症例

坂尾 和哉, 吉田 拓司, 赤池 祝昭, 梅津 昭宏, 熊谷 しづか, 八木 健輔, 宇山 一輝, 蓼沼 沙紀, 渋谷 将大, 村山 俊成 (東京都立小児総合医療センター 麻酔科)

【背景】小児は大腿の血管が未発達でカニュレーションに難渋する。当センターでは、10kgを超える患者から大腿動静脈のカニュレーションを検討している。今回、大腿静脈に脱血カニューレを挿入したECMO導入患者の下大静脈に血栓が形成されたため下大静脈フィルターを挿入した2症例について報告する。
【臨床経過】(症例1)12歳、体重33kg、BSA:1.15m 2の男児。夜間胸痛を自覚し嘔吐したため近医を受診後、心筋炎疑いで当院に搬送される。搬送翌日に脈なしVTが出現しVA ECMO導入となった。ECMO回路はEndumo4000を使用し、送血カニューレは大腿動脈にBiomedicus 15Fr、脱血カニューレは大腿静脈に同17Frを挿入した。血液流量は75ml/kg/min、CI:2.2l/min/m 2確保できた。導入後10日目にECMO離脱。離脱した翌日のエコーにて、下大静脈に約5cmの血栓が確認された。同日、右内頸静脈から下大静脈フィルターを挿入・留置し、未分画ヘパリン(UFH)持続静注を開始した。フィルター挿入から9日目に、下大静脈内の血栓消失を確認し、下大静脈フィルターを抜去、UFH投与を終了した。
(症例2)10歳、体重25kg、BSA:0.96m 2の女児。発熱、消化器症状の遷延のため近医受診後、心筋炎疑いで当院に搬送される。搬送中からVTが頻発しVA ECMO導入となった。ECMO回路はEndumo4000を使用し、送血カニューレは大腿動脈にBiomedicus 15Fr、脱血カニューレは大腿静脈に同19Frを挿入した。血液流量は73ml/kg/min、CI:1.9l/min/m 2確保できた。導入後9日目のエコーにて、下大静脈に約10cmに渡る血栓が確認され、右内頸静脈から下大静脈フィルターを挿入・留置し、同日ECMOを離脱した。離脱後からUFH持続静注を開始し、フィルター挿入から15日目に抜去した。
この2症例の抗凝固剤投与量と血液凝固系検査は、通常のECMO管理と差は認められなかった。また、ECMOの血液流量は安定して保つことができていた。2症例ともに深部静脈血栓症による肺動脈塞栓症や神経学的異常所見は認められなかった。
【結論】ECMO装着による下大静脈の血栓形成に至った症例を経験した。血栓形成に至る要因を特定することは困難であった。この経験を活かし、従来のECMOの抗凝固管理を見直して抗凝固マニュアルを改訂した。また、ECMO装着中からエコーでの血栓評価の必要性があることを認識した。