第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

Pros & Cons

[PC2] Pros & Cons2
感染症治療最前線1:プロカルシトニンを抗菌薬中止の指標に用いるか否か?

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:40 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:藤田 直久(京都府立医科大学附属病院感染対策部), 牧野 淳(横須賀市立うわまち病院集中治療部)

[PC2-2] プロカルシトニンを抗菌薬中止の指標に用いない

丹保 亜希仁 (旭川医科大学 救急医学講座)

ARS(視聴者参加型アンケートシステム)使用】

日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)2016では,抗菌薬中止の指標としてのプロカルシトニン(PCT)使用に関するクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されている.この『CQ5-6:抗菌薬はプロカルシトニンを指標に中止してよいか』に対する推奨は,『敗血症において,PCTを利用した抗菌薬の中止を行うことを弱く推奨する(2B)』となっている.この推奨は2017年2月のJ-SSCG2016公開時には『敗血症,敗血症性ショックにおける抗菌薬治療で,PCT値を指標に抗菌薬の中止を行わないことを弱く推奨する(2B)』とされていた.J-SSCG2016公開後に発表されたde Jongらのランダム化比較試験1)を追加して再解析したところ,PCTガイド下抗菌薬治療により28日死亡率の改善を認めたため,上記のように『PCTを利用した抗菌薬の中止を行うことを弱く推奨』と変更された.
2018年のPCTガイド下抗菌薬治療に関するメタ解析2)では,感染症もしくは敗血症患者ではPCTガイドで治療を行った群での30日死亡率は21.1%であり,コントロール群の23.7%と比較して有意に低下したことが示された.また,敗血症患者ではコントロール群の30日死亡率24.4%が,PCTガイド下治療により21.1%と有意に改善したとも報告されている.
PCTを指標とした抗菌薬中止の有用性についてはよく知られおり,ほとんどの報告でPCT使用により抗菌薬投与期間が有意に短縮することが示されている.一方で,抗菌薬使用期間の延長,Clostridium difficile感染症の増加,再感染の増加の原因となったとの報告も存在する.また,これまでの報告は呼吸器感染症を中心としたものが多く,上記2つの報告でも約5割~6割の呼吸器感染症を含んでいる.Wirzらが行った感染臓器別の解析2)では,PCTガイド下抗菌薬治療は30日死亡率の有意な短縮は見られていなかった.
PCTを指標とした抗菌薬中止に関する肯定的な報告も増えているが,集中治療の1つの役割である死亡率の低下に対してPCTガイド下抗菌薬投与が必要なのか?また,実際の臨床での使用状況についてはどうであろうか?抗菌薬中止にPCTを使用しない,Conの立場で臨む.

【参考文献】
1)de Jong E, et al. Lancet infect Dis 2016;16:819-27
2)Wirz Y, et al. Crit Care 2018;22:191