第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

Pros & Cons

[PC4] Pros & Cons4
敗血症性DICに対する抗凝固療法は有効か?

2019年3月2日(土) 15:25 〜 16:05 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:山川 一馬(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター高度救命救急センター)

[PC4-1] 敗血症性DICに対する抗凝固療法;エビデンスも推奨も無いけれど・・・

横山 暢幸, 高木 俊介 (横浜市立大学附属病院 麻酔科/集中治療部)

ARS(視聴者参加型アンケートシステム)使用】

敗血症にはしばしば血液凝固障害が合併し,とくに播種性血管内凝固症候群 (Disseminated intravascular coagulation: DIC)を合併した敗血症は予後が悪いことが知られている.DICは敗血症によって引き起こされる臓器障害の一つであると同時に,DIC自体が微小血栓形成によって新たな臓器障害を引き起こす.さらに,DICは単に敗血症の一合併症ではなく,血液凝固系と炎症系との相互作用により,生体内の過剰な炎症反応という敗血症の根底的な病態に関わっていることが確認されてきている.
現在国内において敗血症診療によく用いられるガイドラインには,欧米発のSurviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)や,国産の日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)があるが,両者では敗血症性DICに対する姿勢に根本的な相違がみられる.SSCG2016ではそもそも「敗血症性DIC」といった概念がなく,単に凝固障害という枠組みで捉えているのに対し,J-SSCG2016では敗血症性DICを一項目として取り上げ,アンチトロンビン補充といった一部の抗凝固療法を(弱く)推奨している.
また抗凝固療法に対するエビデンスという点では,海外で行われた大規模RCTやそれらをもとにしたメタアナリシスがあるものの,敗血症に合併する凝固障害(軽症を含む)や重症敗血症を対象としており,真に「敗血症性DIC」への治療効果は明らかになっていない.他方,国内からも抗凝固療法について複数の臨床研究が出されているが,サンプルサイズや研究デザインの問題から,真の解答を示すに至っていない.
このように,ガイドラインやエビデンスだけから,敗血症性DICに対する抗凝固療法の有用性を論じるのは現時点では困難である.そのような背景から,本邦においても施設による治療方針の大きな差を生じていると考えられる.本講演では,敗血症性DICに対する抗凝固療法の有用性を原理に立ち返って概説し,さらに実臨床での姿として,当院集中治療部での抗凝固療法の実施状況・成績を紹介する.そのうえで,敗血症性DICに対する抗凝固療法のあるべきポジションを討論・模索していきたい.