第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD10] パネルディスカッション10
遠隔医療 Tele-ICUの可能性

2019年3月2日(土) 08:45 〜 10:15 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:大嶽 浩司(昭和大学医学部麻酔科学講座), 讃井 將満(自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科・集中治療部)

[PD10-1] 遠隔ICU委員会の沿革と今後の展望

高木 俊介 (横浜市立大学附属病院 集中治療部)

ライブ配信】

2025年に超高齢化社会を迎える日本では急性期患者の増加が予想される。そのため、集中治療における医療の需給バランスの悪化が問題視されている。また、同時に医師の働き方改革が取り上げられている中、急性期医療の分野において決定的な打開策が取れていない。集中治療室のように当直勤務としては認められない部署において、集中治療の専門医が常駐できない病院は数多くある。本邦には6,500床の集中治療ベッドがあるが、専門医は約1,500名しかおらず、また多くの専門医は集中治療室に専従は出来ていない。こうした現状から、集中治療室の効率化に向けた需要が高まっている。効率化の策として、遠隔集中治療 (Tele-ICU)の有用性についての注目が挙げられている。複数の集中治療ベッドをネットワークで繋いで、中央でサポートするTele-ICUのシステムが医療の効率化に繋がるため、米国の約20%のICUで導入されている。しかし、米国のTele-ICUを日本に導入するには、幾つかの課題がある。保険診療、医療従事者の役割、医療費、集中治療医の数、病院毎にカスタマイズされた電子カルテなど米国とは異なる点が多い。そのため、日本においてTele-ICUを普及していくための課題の整理とルール策定が必要となる。上記の様な背景から2018年5月に日本集中治療医学会 ad hoc遠隔ICU委員会が設立された。委員会の役割として、Tele-ICUで望まれる重症度予測アルゴリズムの整理、ルール策定、ビッグデータ化に向けたデータベースの設定、Tele-ICUに必要な情報セキュリティレベルとそれを実現する医療機器の標準的な使用ならびに運用基準・体制を策定するなどを挙げている。医療現場へのICT導入が推進されている中、集中治療現場にも同様の傾向が見られている。厚生労働省が平成31年度の予算としてTele-ICU体制整備促進事業として5.5億円の概算要求をしている。募集要項の中には、遠隔より適切な助言を行い、若手医師等、現場の医師をサポートし勤務環境を改善するため、複数のICUを中心的なICUで集約的に患者をモニタリングし、集中治療を専門とする医師による適切な助言等を得るために必要な設備や運営経費に対する支援を行う、とされている。ここで注目するべきポイントとして、勤務環境の改善をするために、Tele-ICUを活用して集約的な管理をする事を期待している点である。近年、医師の働き方改革が課題となっている中、急性期医療における残業や夜勤の労務軽減は効果的な施策がないのが現状である。集中治療専門医がTele-ICUにより現場を管理する事で、医療の質向上、病床利用率の改善、労務効率の改善などの効果を実証していく事を遠隔ICU委員会に求められていると感じている。