第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD12] パネルディスカッション12
PICS対策とpost intensive careに向けた改善策

2019年3月2日(土) 08:45 〜 10:45 第19会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール2)

座長:剱持 雄二(東海大学医学部付属八王子病院看護部 ICU・CCU), 福家 良太(東北医科薬科大学医学部感染症学)

[PD12-4] Semi-closed ICUにおけるPICS対策 ―他職種連携を軸として―

齋藤 豊1, 浅野 哲1, 諏訪 潤子6, 青山 道子2, 安藤 慧二3, 石川 史明4, 上田 晃弘5 (1.日本赤十字社医療センター 集中治療科, 2.日本赤十字社医療センター 看護部, 3.日本赤十字社医療センター リハビリテーション技術課, 4.日本赤十字社医療センター 栄養課, 5.日本赤十字社医療センター 感染症科, 6.日本赤十字社医療センター 麻酔科)

ライブ配信】

近年,ICUにおける各種重症病態の救命率は向上したが,人工呼吸離脱困難,歩行・摂食困難,認知機能障害,精神障害など,亜急性期から慢性期におけるADLの低下とそれに伴う生命予後の悪化が問題とされ,PICSの概念が提唱された。当センターICU(16床)は内科系・外科系混合(救急を除く)のsemi-closed ICUである。PICS対策の中心となる4本の柱は(1)早期離床・リハビリテーション,(2)栄養管理,(3)鎮痛・鎮静・せん妄管理,(4)感染管理と考えている。これらについて医師,看護師のみでは行い得ず,専門スタッフによる他職種連携が欠かせない。(1)早期離床・リハビリテーションについては,今年度の診療報酬改定で加算が認められたのに伴い,集中治療科医,看護師,専任理学療法士からなるチームにより原則として入室48時間以内に全例介入を開始している。全身状態が不安定な重症患者であっても,注意しながら最低限関節可動域訓練は行っている。人工呼吸管理の長期化が見込まれる患者には早期気管切開を行い,鎮静を浅くしてリハビリテーションの促進を期している。(2)栄養管理については,専任管理栄養士とともに入室後速やかに栄養評価・計画立案を行い,可能な限り早期経腸栄養を行っている。経口摂取開始時には言語聴覚士に嚥下評価・訓練を依頼し,誤嚥のリスク軽減に努めている。(3)鎮痛・鎮静・せん妄管理については,オピオイドを中心とした十分な鎮痛,RASS -2~0を目標として主にプレセデックスを用いる必要十分な鎮静,ICDSCを用いたせん妄評価を行っている。せん妄コントロール困難の場合には精神科リエゾンチームの協力を得て心理学的・薬理学的介入を行っている。(4)感染管理について,感染コントロール不良はICU滞在を遷延させPICSの危険因子になると考えられるので,感染症科と週1回感染カンファレンスを行い適切な感染源検索や抗生剤使用に努めている。Semi-closed ICUにおける円滑な他職種連携には,集中治療科医,看護師がコアとなり,各科主治医と各専門スタッフの間で十分な意思疎通を図ることが最も重要と考えている。また,PICS対策はICU退室後,病棟でも継続して行われる必要がある。退室前から看護スタッフ,各専門スタッフとも病棟間で十分な申し送りを行い,退室前後でケアにギャップが生じないよう留意している。今後は退室後の機能的回復について体系的にフォローしてゆきたい。