[PD12-5] 大学病院PICUにおける小児集中治療後症候群の具体的事例と対策
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【背景】2010年に集中治療後症候群(PICS)の概念が提唱されて以降、成人ICU患者における運動機能・認知機能・精神状態の長期予後や患者家族の精神状態への関心が高まってきている。一方で、小児ICU患者におけるPICSは、概念および成人との相違点共に定まっていない。【目的】成人PICSの基準を満たすと考えられる小児ICU患者症例を後方視的に検討し、現状の課題を明らかにすること。【症例】症例1:5歳女児。ウイルス関連血球貪食症候群で臍帯血移植術後、脳皮質下出血を発症し、開頭血腫除去術を施行されPICUに入室した。入室後47日目に退室後、拒食症状を呈し、入室後62日目に言語聴覚療法を導入した。発症3か月後の退院時には症状は消失した。症例2:7歳男児。縦隔腫瘍による気道狭窄症状を呈し、PICUに入室した。T細胞性急性リンパ球性白血病と確定診断し、人工呼吸器管理7日間、全身ステロイド投与を施行され、入室後8日目に退室した。退室後、筋力低下によるADL低下、発語の低下をみとめた。入室後35日目に理学療法を導入し、入室3か月後の退院時には筋力低下、発語共に改善した。症例3:11歳女児。急性心筋炎の診断でPICUに入室した。経過中に数分間の心停止があり、筋弛緩薬を併用した人工呼吸器管理10日間、平温管理を施行し、入室14日目に退室した。筋力低下があり、入室後10日目に理学療法を開始し、入室1か月後に退院、入室2か月後には復学および体育への参加が可能となった。入室後から抜管前日までの記憶は保たれておらず、挿管中・覚醒下では興奮・不安が強かった。入室11日目に挿管・覚醒下で両親・子ども療養支援士と共に児へ病状説明を行い、治療への協力を得た。症例4:、10歳男児。特発性拡張型心筋症で前医に入院後、心停止があり体外循環式心肺蘇生された。意識清明であったが、経皮的心肺補助から離脱困難であり、補助人工心臓(VAD)装着目的に当院PICUに転院した。VAD装着後も、低栄養、筋力低下が著明で人工呼吸器依存状態が続き、入室60日目に気管切開を要した。経過中、覚醒下で興味の喪失・無気力が目立ち、児の興味を引く遊びを取り入れながら理学療法を進めた。症例1および症例3で母親から不眠症状の訴えがあり、介入を要した。【結論】小児ICU患者・患者家族においてもPICSを発症し、介入を要する場合があり、評価・介入において定量的な指標が必要であることが示唆された。