[PD14-2] カンジダ血症マネジメントバンドルを用いた多施設研究 ~実施率の低い項目~
【 ARS(視聴者参加型アンケートシステム)使用】
米国感染症学会や欧州臨床微生物学会ガイドラインで特にエビデンスのあるマネジメントを選択し、それを個々でなくバンドル(束)にして実施することにより治療成績や予後が改善することを竹末らが報告している(J Antimicrob Chemother, 70 : 587-593, 2015)。今回、実施率が低い「眼科的精査」、「血液培養陰性化確認」、「経口薬へのstep-down」の項目に着眼し多施設で調査した。
調査対象施設は「キャンディン研究会」の5施設大学病院で、カンジダ血症例370例における真菌性眼病変を調査した結果、眼科受診率76.8%、真菌性眼病変は21.1%と高率であった。真菌性眼病変における硝子体浸潤例は30.0%、そのうち眼症状を呈したのが77.8%と高率であった。また、有意識例での眼症状は36.7%であった。眼科的精査は、初回所見がなかった235例のうち69例(29.4%)が再検し、11例(15.9%)が眼病変と診断された。真菌性眼病変の診断のタイミングは初回81.7%、2回目以降18.3%と再検査で眼病変が証明されており、少なくとも2回以上の受診が必要と考える。真菌性眼病変診断時のカンジダ血症例における血液培養分離菌種は、C. albicans(86.9%)、C. parapsilosis(6.6%)、C. glabrata(4.9%)、C. tropicalis(1.6%)であり、抗真菌薬の選択はアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)61.7%(うち5-FC併用36.7%)、アゾール系31.7%、キャンディン系6.6%で、治療成績は眼科的所見の治癒・改善83.0%、全身的臨床所見の改善73.3%、28日以内の死亡率21.7%、硝子体内注射・硝子体切除1.7%であった。
Follow upの血液培養実施率は74.9%とやや低率であったが、解熱や炎症所見の改善を認めない場合は必須と考える。血液培養の再度陽性確認率は23.8%(2回陽性56.0%、3回陽性25.8%、4回以上陽性18.2%)。血液培養複数回陽性に関する因子は、CVC抜去遅れやペースメーカー感染28.8%、心内膜炎などソースコントロール不良16.7%、敗血症ショックなど重症感染や宿主がコンプロマイズドホスト13.6%、原因真菌が選択薬に低感受性やブレイクスルー感染9.1%、炎症性腸疾患など腸管粘膜からのトランスロケーション15.1%、その他16.7%であった。3回以上陽性例では真菌性の感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎を疑い、心エコー検査やMRIを考慮しなければならない。また、抗真菌薬の投与期間が血液培養陰性化から最低2週間とされているため、この点からも陰性化確認は必要となる。
カンジダ血症における経口薬へのstep-downは35.1%実施され、アゾール系では注射剤と同一成分の経口剤に変更し、キャンディン系やL-AMBでは経口VRCZへ変更される傾向がみられた。2週間の抗真菌薬治療を達成するためには、患者状態が経過良好で腸管麻痺がなければ、医療経済的にもアゾール系経口剤へstep-downを行うことを推奨する。
謝辞:本研究は、平成30年度日本医療研究開発機構 (AMED) の課題番号【JP18fk0108045】の支援を受けた。
調査対象施設は「キャンディン研究会」の5施設大学病院で、カンジダ血症例370例における真菌性眼病変を調査した結果、眼科受診率76.8%、真菌性眼病変は21.1%と高率であった。真菌性眼病変における硝子体浸潤例は30.0%、そのうち眼症状を呈したのが77.8%と高率であった。また、有意識例での眼症状は36.7%であった。眼科的精査は、初回所見がなかった235例のうち69例(29.4%)が再検し、11例(15.9%)が眼病変と診断された。真菌性眼病変の診断のタイミングは初回81.7%、2回目以降18.3%と再検査で眼病変が証明されており、少なくとも2回以上の受診が必要と考える。真菌性眼病変診断時のカンジダ血症例における血液培養分離菌種は、C. albicans(86.9%)、C. parapsilosis(6.6%)、C. glabrata(4.9%)、C. tropicalis(1.6%)であり、抗真菌薬の選択はアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)61.7%(うち5-FC併用36.7%)、アゾール系31.7%、キャンディン系6.6%で、治療成績は眼科的所見の治癒・改善83.0%、全身的臨床所見の改善73.3%、28日以内の死亡率21.7%、硝子体内注射・硝子体切除1.7%であった。
Follow upの血液培養実施率は74.9%とやや低率であったが、解熱や炎症所見の改善を認めない場合は必須と考える。血液培養の再度陽性確認率は23.8%(2回陽性56.0%、3回陽性25.8%、4回以上陽性18.2%)。血液培養複数回陽性に関する因子は、CVC抜去遅れやペースメーカー感染28.8%、心内膜炎などソースコントロール不良16.7%、敗血症ショックなど重症感染や宿主がコンプロマイズドホスト13.6%、原因真菌が選択薬に低感受性やブレイクスルー感染9.1%、炎症性腸疾患など腸管粘膜からのトランスロケーション15.1%、その他16.7%であった。3回以上陽性例では真菌性の感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎を疑い、心エコー検査やMRIを考慮しなければならない。また、抗真菌薬の投与期間が血液培養陰性化から最低2週間とされているため、この点からも陰性化確認は必要となる。
カンジダ血症における経口薬へのstep-downは35.1%実施され、アゾール系では注射剤と同一成分の経口剤に変更し、キャンディン系やL-AMBでは経口VRCZへ変更される傾向がみられた。2週間の抗真菌薬治療を達成するためには、患者状態が経過良好で腸管麻痺がなければ、医療経済的にもアゾール系経口剤へstep-downを行うことを推奨する。
謝辞:本研究は、平成30年度日本医療研究開発機構 (AMED) の課題番号【JP18fk0108045】の支援を受けた。