[PD15-1] MRSA感染症の治療戦略Update-MRSA菌血症を中心に
【 ARS(視聴者参加型アンケートシステム)使用】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus,MRSA)はもっとも一般的な薬剤耐性菌であり,現在も治療に難渋する病原体である.本邦では海外で使用されている抗菌薬が承認されていないという治療上の制限が存在する.一方,重症患者でのエビデンスに乏しい抗MRSA薬を使用する現状も存在する.本口演では最初に本邦で使用可能な抗MRSA薬の概略を述べる.加えてMRSA治療の第一選択薬であるバンコマイシンの持続投与の理論的背景と当院での経験を紹介する.また海外ではMRSA菌血症に対するバンコマイシンとベータラクタム製剤の併用療法について研究が行われており,パイロットRandomized Clinical Trial(RCT)を基にして,国際多施設RCTが進行中である.さらに本邦では承認されていないが,第5世代セファロスポリン薬のセフタロリンなどの抗MRSA薬が海外では使用されている.また黄色ブドウ球菌では治療期間が長期間になることが多いが,治療期間の短縮可能性を示唆する研究も存在し,RCTでの検証が進行中である.通常治療に反応しない遷延するMRSA菌血症にしばしば遭遇するが,定型の抗菌薬レジメンは存在せず複数の抗菌薬併用療法が報告されている.またMRSAを始めとする黄色ブドウ球菌感染症では感染症科と協力して治療に当たることが患者アウトカムおよび診療の質の改善において重要である.