第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD17] パネルディスカッション17
敗血症性DICへのアプローチ:これからの敗血症性DICを考える

2019年3月3日(日) 14:00 〜 16:00 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:射場 敏明(順天堂大学医学部附属 順天堂医院救急・災害医学), 小倉 裕司(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター)

[PD17-4] 治療ターゲットの最適化から敗血症性DICの治療戦略を再考する

梅村 穣 (大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

【背景】適切な対象の選定は抗DIC療法の有効性を十分に発揮させるために必要不可欠であり、敗血症性DIC治療戦略を考える上で最重要視すべき点の一つである。これまでに我々はランダム化比較試験(RCT)のメタ解析、および本邦の多施設共同研究(J-Septic DIC study)のデータ解析を行い、抗凝固療法の最適なターゲットは、「敗血症」に加えて「DIC」を合併し、「重症度の高い」症例であることを示してきた。さらに我々はより具体的に抗凝固療法のターゲットを同定するため以下の研究を行った。
【対象と方法】本邦の42施設からJ-Septic DIC registryに登録された敗血症2663症例を対象とした。DICスコア各点に関して、その点を閾値として全例で抗凝固療法を行ったと仮定した場合の予測死亡患者数をシミュレートした。例えば「もしJAAM-DICスコア4点以上の患者全例に対して抗凝固療法がおこなわれていた場合」に予測される総生存患者数は、下記の1)、2)の加算によって算出した。
1) JAAM3点未満の患者総数×JAAM3点未満における非抗凝固療法群の調整死亡率
2) JAAM4点以上の患者総数×JAAM4点以上における抗凝固療法群の調整死亡率
本研究はJAAM DIC基準とISTH overt-DIC基準の双方を用いて解析し、また比較する群間における患者背景の差は傾向スコアを用いた逆数補正法によって調整した。
【結果】JAAM DIC基準とISTH overt-DIC基準のいずれにおいても、閾値が0~3点の場合の予測死亡症例数は同程度であったが、閾値が4点以上となった場合、直線的に予測死亡症例数が増加することが示された。逆に出血性合併症の発生率は閾値の上昇に伴ってほぼ直線的に低下することが示された。
【結論】各DIC基準を凝固療法開始基準として考えた場合の理想的な閾値は、各基準のDIC診断の閾値よりも低い可能性が示唆された。敗血症性DICの治療戦略は、抗凝固療法の最適な使用方法を追求することでさらに改善する余地があると考える。