第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD18] パネルディスカッション18
集中治療領域における栄養と看護

2019年3月3日(日) 14:00 〜 15:30 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:小谷 穣治(国立大学法人 神戸大学大学院医学系研究科 災害・救急医学), 清水 孝宏(地方独立行政法人那覇市立病院看護部)

[PD18-5] 早期経腸栄養における10年間の推移と看護師の役割

山本 舞1, 日高 寿江1, 中村 まい1, 林 真理1, 甲斐 菜津美1, 海塚 安郎2 (1.製鉄記念八幡病院 看護部 集中治療室, 2.製鉄記念八幡病院 救急・集中治療部)

背景日本版重症患者の栄養療法ガイドラインではICU入室24~48時間以内の経腸栄養開始を推奨している.当ICUではプロトコールに基づき,早期に経腸栄養開始に向けてケアを行っている
目的10年間の経腸栄養開始と転帰の推移を調査し,看護師の役割を考える
方法2008年~2017年にICU入室かつ48時間以上呼吸管理を行った患者794名の症例を集積し10年間の年次集計とその推移を検討
結果1.患者背景1)年齢74.1±1.9 (72~77.6)歳 2)APACHEII21.3±0.94(20.1~27.1)10年前に比べ平均年齢は5歳上昇,重症度は年次によって差があるが上昇傾向
2.経腸栄養開始時間1)24時間以内51.3(35.2~66.0)% 2)48時間以内平均65(47.7~73.8)%ともに年々増加傾向.特に24時間以内の群が10年前よりほぼ2倍に増加
3.アウトカム1)ICU入室期間9.7±2.3(7.2~14.2)日で年々短縮し,現在は7.2日で10年前に比べて4日短い2)呼吸器使用日数は7.7±1.9(6~11)日で同様に3日短い3)10年間での経腸栄養開始時期による生存率は24時間以内(n=407名内生存245名60.2%)・48時間以内(n=516名内生存309名59.9%)でともに経腸栄養をしなかった(適応外症例,プロトコールの条件に満たない例,主治医の意向)群対し有意に改善.
結論 患者背景の年次比較において,年齢は高齢化社会を反映し10年前に比べ上昇,APACHEIIも上昇傾向.それに対し経腸栄養開始は24時間・48時間以内開始群共に年々増加傾向,経腸栄養をしなかった群に比べ生存率も高いことから早期経腸栄養の有効性が示唆される.
当ICUでは栄養・腸管管理において独自のプロトコールを作成・使用している.このプロトコールは開始基準~中止基準まで明示し,入室時より栄養アセスメント,腸管機能評価・管理を行った上で経腸栄養を開始している.開始後の血糖管理,腸管管理,栄養データにより栄養剤の変更や投与量調整,継続中止を行う.またICU専任医の指示に基づき,当院患者に合致し使用しやすい形に年々改訂される.
看護師の役割は,栄養アセスメントに加え,栄養チューブ挿入、排便管理,血糖管理,消化器症状の観察,NST依頼などがある.消化器症状発生時は,医師に報告し経腸栄養の速度・量の変更や止痢剤の投与などを行う.プロトコールに基づき早期に開始された症例でケアが難渋した経験はない.そのため看護師も抵抗なく早期経腸栄養開始への意識も高く取り組む事ができる.
経腸栄養の開始・継続にあたり看護師の役割は多岐に渡るが,ICUプロトコールを活用し,腸管管理に重点を置いた観察・アセスメントを行う事が大きなポイントである.