第46回日本集中治療医学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD3] パネルディスカッション3
救急とICUの連携

Fri. Mar 1, 2019 9:00 AM - 10:30 AM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:織田 成人(千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学), 鶴田 良介(山口大学医学部附属病院先進救急医療センター)

[PD3-2] 救急とICUの連携(熱傷)集中治療室における熱傷診療のポイント

大須賀 章倫 (独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 救急科)

広範囲の熱傷や気道熱傷は集中治療室で管理することが多い。広範囲熱傷は皮膚の損傷という単一臓器の問題ではなく、多臓器に及ぶ全身性の障害である。熱傷受け入れ患者数の少ないICUでは普段見慣れない現象に振り回されることも多いと思われる。当院は国内でも有数の熱傷患者搬入数であり、その管理もほぼ統一化されている。今回はその中でも通常のICU診療と異なると考えられる点を特にフォーカスする。また、熱傷センターへの転送のタイミングなどもディスカッションしたいと考えている。前述のごとく熱傷は単に皮膚が焼けたというだけではなく、循環動態に及ぼす影響は大きいことが知られている。特に熱傷初期輸液はParklandの公式などによって計算されていることが多いと思われる。現在当院では開始輸液はParklandの公式の半量から始めることが多い。ICU入室後は、循環動態モニタ・乳酸値・血清Alb・Hct・尿量などを指標に輸液量を管理しているが、そのためには、広範囲熱傷患者の経時的な循環動態の変化を把握していることが重要である。高齢者で尿量に固執するとover volumeとなりその後の合併症が多くなるため注意が必要である。さらにFluid Creep/Opioid Creepという現象を避けるため不必要な挿管管理は行わない。なお、頻回の手術や長期間に及ぶICU管理が要されるため、抗菌薬の使用は限りなく制限されている。予防的な抗菌薬投与は原則行わないし、抗菌薬含有の軟膏も用いていない。熱傷後の発熱はその炎症源がなんであるのか、すなわち細菌感染による炎症と熱傷そのものによる炎症とを区別することは困難なことも多い。熱、CRPなどはこれらを見分ける役にはほとんど有効ではない。さらに熱傷急性期には細菌毒素によるTSSにも注意する必要がある。熱傷焼痂は感染源となりうるため、可及的速やかな除去を目指す。3度熱傷であるならば1週間以内に全焼痂を除去することを目標としている。また手術時の止血法や体温管理にも工夫を凝らしている。栄養管理、早期リハビリにも積極的に取り組んでいる。熱傷患者の消費カロリーは通常考えられるよりはるかに多いため、NSTとも適宜相談しながら栄養投与量を管理している。また、熱傷そのものおよび長期仰臥に伴う拘縮は大きな問題であり、処置時に麻酔下での拘縮予防リハビリなども行っている。以上のように当センターでは集学的・多角的な診療を行っており、我々の診療方針につき概説する。