第46回日本集中治療医学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD3] パネルディスカッション3
救急とICUの連携

Fri. Mar 1, 2019 9:00 AM - 10:30 AM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:織田 成人(千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学), 鶴田 良介(山口大学医学部附属病院先進救急医療センター)

[PD3-3] 中毒事例における救急とICUの連携

井上 貴昭1, 星野 哲也1, 城戸 崇裕2, 小山 泰明1, 榎本 有希1,2, 下條 信威1, 河野 了1, 左津前 剛3, 高橋 伸二3 (1.筑波大学 附属病院 救急・集中治療部, 2.筑波大学 附属病院 小児科, 3.筑波大学 附属病院 麻酔科)

 中毒の診療は、a.避難と除染、b.バイタルサインの確認と全身管理、c.未吸収物の吸収阻害、d.排泄の促進、e.解毒剤・拮抗薬の使用、f.再発の予防、の6つのプロセスがシームレスにつながることが求められる。中毒傷例の対応について十分念頭におくべきは、常に医療者が2次汚染・被害を被るリスクがあることである。 まず(a)のプロセスでは、救急医が担当することがほとんどであるが、場合によっては病院前から中毒診療に関わることもある。例えば、異臭・危険物の存在する現場への派遣や、救急外来における乾式除染としての脱衣、及び湿式除染となるシャワー浴や清拭である。必要に応じて個人防護服の着用も必要になることもある。リーダーとなる救急医は、中毒傷例においては、現場から救急外来においても、自分の身を守り、自分のチームを2次汚染・被害から守る必要がある。また、ICUスタッフへの連携として、脱衣した着衣の扱い、湿式除染の状況などを十分に伝達する必要がある。(b)-(e)のプロセスにおいては、救急とICUスタッフが連携して進める重要な課程である。原因物質に関わらず、まずはバイタルサインを評価し、安定化させる必要がある。進行性に呼吸障害をきたす中毒物質や、心電図変化や致死性不整脈をきたす中毒物質などもあり、原因物質が明らかな症例では今後起こりうるリスクを十分共有する必要がある。(c), (d), (e)のプロセスにおいては、時間的制限があるものもあり、胃洗浄や血液浄化などの処置準備と関連スタッフへの連絡、また解毒・拮抗薬のオーダリングなど、ICUスタッフとの密な連携が極めて重要である。更には、原因不明の薬物においては、瞳孔所見や流涎・発汗などの身体所見、QT延長などのモニター心電図変化など、ICUスタッフの細やかな観察が、原因物質の特定や中毒症状の早期発見につながることがあり、適切な情報共有が求められる。(f)においては、自殺企図患者においては精神科との連携、労災であれば産業医との連携が重要となる。加えて、早期社会復帰の鍵となるのは、やはりICUスタッフとなる。とりわけ人工呼吸管理や、鎮静管理を要する症例では、早期リハビリテーション、せん妄予防対策などが、重要な鍵である。 このように、中毒症例においては医療者の安全の確保をまず考慮するという点において、多職種間のコミュニケーションが特に必要となる。