第46回日本集中治療医学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD3] パネルディスカッション3
救急とICUの連携

Fri. Mar 1, 2019 9:00 AM - 10:30 AM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:織田 成人(千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学), 鶴田 良介(山口大学医学部附属病院先進救急医療センター)

[PD3-4] 災害時のICUの対応と機能維持 - 2018年大阪北部地震の経験をもとに

大西 光雄1, 若井 聡智2, 中川 雄公1, 嶋津 岳士1 (1.大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター, 2.国立病院機構 大阪医療センター 救命救急センター)

災害時には増大する医療の需要に対する人的・物的・空間的医療資源の供給のバランスが崩れないように資源配分を行い対応しなければならない。そのためには、過去に各地で発生した災害への対応から学びながら、準備や訓練を行い、実際の災害時により良く機能するように医療機関全体で取り組む必要がある。それぞれの医療機関において災害対策マニュアルは整備されていると考えるが、ICU運用の位置づけはどのように記載されているだろうか。被災地から搬入される傷病者に対してベッドコントロール部門はどのように空床を運用し、ICUを効率的に稼働させるのか。停電や断水・漏水時には、非常用電源や備蓄の水源でどのように対応するのか。そもそも医療機関やICUの機能が維持できない場合には、災害時の医療支援を担うDMAT等と協働しながら患者の搬送を行う必要があり、どのような情報を共有し搬送の順位を決定するのか。また、人的資源においては対応する医療スタッフが参集するために必要なことは何か。医療機器の滅菌や事務など、業務を維持するために必要な人材がアウトソーシングされている場合を含め災害時対応の取り決めはなされているのか。各医療機関において十分な検討と準備が必要である。
 2018年6月18日大阪北部地震が発生し、被災地域内にあった当院の対応を紹介する。震災直後に院内に災害対策本部およびDMAT活動拠点本部が立ち上がった。直ちに空床状況、施設の被災状況、スタッフ・患者の安否確認が行われた。骨盤骨折や下肢開放骨折などの外傷患者を救命センターに受け入れる一方で、近隣の医療機関が漏水により機能低下を来たしたため、ICU対応が必要な患者を含む18名の搬送に対応し、そのうち15名(ICU収容1名、NICU収容2名を含む)の患者を受け入れた。幼稚園・小学校などが休園・休校となったため臨時託児所を開設し、6月19日から22日までで延べ44名が利用し、人的資源を保つ事ができた。
 医療機器への依存度が高い患者を収容するICUは医療スタッフ全員で災害を想定し、例えば体外循環とベッドの固定は震災の揺れに対してどうあるべきか、といったミクロな視点からベッドコントロールやスタッフの運用、さらにはICUの機能が低下した際への対応、といったマクロな視点まで、いろいろな観点から準備が必要となる。また、災害時には外傷だけでなく避難所で発生頻度が上昇する深部静脈血栓症や熱中症など環境異常に起因する病態、医療が継続できなくなる事により増悪する様々な疾患、食中毒などの感染症も想定する必要がある。そのなかにはICU対応が必要となる病態もあろう。地震や水害に代表されるような自然災害への対応はもちろんのこと、国際的なイベントなど多数の人々が集まる状況での災害への対応への準備も考えておかなければならない。