[PD4-4] 外傷診療におけるクリオプレシピテート
近年、重症外傷診療において、一時的止血術までの低血圧の許容と早期輸血投与・晶質液過剰投与の回避、トラネキサム投与で構成されるDamage control resuscitationの重要性が示唆されており、当院ではこれらを遵守している。特に輸血に関しては2013年よりMassive Transfusion Protocol(以下、MTP)を作成し、救命センター初療にO型RBC 10単位、AB型FFP 10単位を常備し運用してきたが、さらなるFFP早期投与を目指し、2017年より院内調整のAB型クリオプレシピテート製剤を初療室に常備する新たなMTPを導入した。その適応は1)出血性ショック、2)低フィブリノゲン血症、3)D-dimer 50μg/mL以上の線溶系亢進、又はこれらが疑われる鈍的外傷症例に加えて産科危機的出血症例についても導入可能としている。また、当院では240mLのFFP製剤4単位を50mLへ濃縮し、150mL 12単位分を1セットとしている。新たなMTP運用が開始された2017年2月から2018年7月までの約18ヶ月間で、心停止を除く鈍的外傷48例に対しクリオプレシピテート製剤が投与された。MTP発動からクリオプレシピテート製剤投与開始までの時間(中央値)は17分(IQR 13-25)であった。また、クリオプレシピテート製剤投与開始から終了までの時間は15分(10-25)、MTP発動から投与終了までの時間は37分(IQR 27-48)であった。クリオプレシピテート製剤はFFP製剤720mlを150mlへ濃縮するため溶解・投与速度が速くMTP発動から投与終了までの時間が短縮され、重症外傷症例に対し迅速なフィブリノゲン投与が可能であることが示唆された。当院のMTPは重症鈍的外傷症例に対しての重篤な外傷性凝固障害に対する迅速な蘇生に重点をおいたMTPであり、その運用方法と成績について報告する。