[PD7-4] 多臓器不全における急性腎障害バイオマーカーの評価
【 同時通訳付き】
急性腎障害(acute kidney injury: AKI)は集中治療領域においても頻度の高い臓器障害の一つであり、多臓器不全症例においてAKIほぼ必発と言ってよいと思われる。重症AKIにおいては血液浄化療法が必要となるが、技術的には十分に進歩した生命維持療法を用いたとしても、このような症例の死亡率はいまだ50%近いことが国内外から報告されており、重症AKIを合併する多臓器不全を克服することは重要な課題の一つである。この10年間で臨床応用に至ったAKIバイオマーカー(尿中NGAL、L-FABP)に課せられた目標は血清クレアチニンよりも早期のAKI検出であったが、臨床評価の過程においてclinical contextにおける使い分けが必要であることも明らかとなってきた。我々の検討においては尿中NGALが高乳酸血症を伴う敗血症においてAKI診断性能が高く(Asada T, et al. Sci Rep. 2016;6:33077)、一方、尿中L-FABPは心臓手術あるいはCCUでのAKI発症予測に関して良好な結果が報告されている。また、これらのAKIバイオマーカーは腎障害特異的な上昇を示すわけではないことが知られており、AKIという単一臓器障害を正確に反映できてないという欠点がある一方で、ICU症例の死亡予測においては有用であることから、AKIに由来する他臓器障害(臓器連関)の存在を間接的に示しているとも考えられる。本発表においては、実臨床において測定が可能となったAKIバイオマーカーの結果を多臓器不全症例の診療においてどのように活用するかについて考察したい。