[PD8-1] 熱傷後敗血症モデルにおけるResolvin D2の好中球遊走能と敗血症抵抗性の改善効果
【背景】侵襲が加わると炎症が惹起され、その影響は生体防御として作用するものから自己破壊的な作用を及ぼすものまで存在する。集中治療では感染制御が患者管理の重要な一つの課題であり、特に重症患者であるほど高頻度に易感染性を生じ、感染制御に難渋する。易感染性を回避するため、どのように超急性期の炎症を抑制するかが重要な問題の一つである。【目的】好中球遊走能と敗血症抵抗性の関連を評価し、その機能保持により易感染性を回避する方法を検討する。【方法】Wistar雄ラットを用い、背部に30%熱傷面積の3度熱傷モデルを作成した。熱傷2時間後から7日後までResolvin D2 (以下、RvD2) を経尾静脈的に連日投与した。対照群では溶媒の投与を行った。熱傷9日後にCecal ligation(以下、CL)またはLipopolysaccharide(以下、LPS)の経尾静脈投与を行い、その後1週間の生存率を確認した。また、別個体を用いて熱傷9日後までのラットから好中球を取り出し、個々の好中球の遊走能を顕微鏡下に観察できるデバイスを用いて評価した。あわせて、熱傷後、CLおよびLPS投与後のサイトカインの血中濃度の推移を比較検討した。【結果】対照群ではCL群・LPS群ともに全てのラットが死亡した。RvD2治療群ではCL群で80%、LPS群で全てのラットが生存した。好中球遊走能はRvD2治療群で有意な改善を認め、血中サイトカイン濃度はRvD2治療群で全体的に低く推移し有意差を認めた。【考察】RvD2は、炎症が収束に向かう際に生理的にDocosahexaenoic acidから合成されるlipid mediatorである。熱傷後の全身性の炎症反応がRvD2投与によって早期に収束に向かい、2nd septic eventに対する抵抗性が維持できたと考えられる。【結語】RvD2投与による炎症反応抑制、好中球遊走能と敗血症抵抗性の改善を認めた。