第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD8] パネルディスカッション8
敗血症の基礎研究 Bench to bedside

2019年3月2日(土) 08:45 〜 10:15 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:井上 茂亮(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野), 松田 直之(名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野)

[PD8-3] 高齢マウス反復性敗血症モデルにおいて、IL-15は遷延するT細胞疲弊を長期間改善する

齋藤 雅史, 井上 茂亮, 安藤 維洋, 山田 勇, 前田 裕二, 小谷 穣治 (神戸大学 大学院 医学研究科 外科系講座 災害・救急医学分野)

【背景】高齢者敗血症は予後が不良である。高齢者ではT細胞の機能低下(T細胞疲弊)をきたし院内感染などの遷延する2次感染を繰り返すことが一因と考えられるが、敗血症後のT細胞疲弊を長期間評価した研究はほとんどない。Interleukin-15(IL-15)は、T細胞の分化を促して活性化させるだけでなく、抗アポトーシス作用を示すサイトカインである。これまで我々は、IL-15投与が若齢および高齢マウス敗血症モデルのT細胞疲弊を抑制し生存率を有意に高めることを報告してきた。しかしながらIL-15が高齢マウス敗血症モデルの遷延する免疫疲弊を長期的に改善するかは十分検討されていない。【目的】高齢マウスに便懸濁液(Cecal Slurry: CS)を複数回腹腔内投与する高齢マウス反復性敗血症モデルを作成し、遷延するT細胞疲弊に対するIL-15の効果について経時的に評価する。【方法】ICRマウスから盲腸内容物を摘出後、15%グリセロールに懸濁したCS(1.5mg/mL)を調製し、凍結保存した。解凍したCSを2年齢の雌性C57BL/6マウスに50uLを腹腔内に3日おきに合計4回投与し、遷延する敗血症モデルを作成した(CS群)。このマウスに対し、IL-15を0.5ugずつ合計3回皮下注射した(CS+IL-15群)。これらのマウスについて1)生存率、2)CD4+およびCD8+T細胞の割合、3)CD4+およびCD8+T細胞におけるProgrammed-death1(PD-1)の割合、4)制御性T細胞(Treg)の割合の変動を50日間評価した。【結果】1)生存率:CS群の生存率は70%、CS+IL-15群の生存率は100%であった。2)CD4+およびCD8+T細胞の割合:CS群のCD4+T細胞は徐々に低下したのに対し、CS+IL-15群ではCD4+T細胞の減少が有意に抑えられた(p=0.03)。3)CD4+およびCD8+T細胞におけるPD-1の割合:CD4+およびCD8+T細胞とも、CS群においては速やかにPD-1+T細胞が上昇し、Day10以降に減少した。それと比較し、CS+IL-15群では1回目のIL-15投与後(Day4)にPD-1+T細胞が減少し、その後、持続的に低値を示した(p<0.01)。4)Treg細胞の割合:CS投与後、両群においてTreg細胞の割合は上昇した。CS群においては50日間、Treg細胞の割合は持続的な高値を示したのに対し、CS+IL-15群では有意に上昇が抑制された(p<0.01)。【結語】IL-15は、高齢マウス反復性敗血症モデルにおいてPD-1+T細胞およびTreg細胞の誘導を長期間抑制することでT細胞疲弊を改善し、高齢者敗血症患者の免疫賦活作用に寄与する可能性がある。