[PD8-4] 脂肪組織のvery low density lipoprotein receptorを介したlipopolysaccharide解毒に関する検討
【背景】近年、敗血症において、肥満患者の方が予後良好であるとするobesity paradoxが報告され、その機序の一つとして、脂肪組織によるlipopolysaccharide(LPS)をはじめとした病原体脂質の不活性化が挙げられている。病原体脂質はlow density lipoprotein(LDL)などの脂質と結合し、Toll-like receptorを介して炎症反応が惹起される。一方で、LDLと結合したLPSは、LDL receptor(LDLR)を介し肝細胞へ取り込まれるが、敗血症モデルにおいて、脂質受容体調整蛋白であるproprotein convertase subtilisin/kexin type 9 (PCSK9)投与により、肝臓のLDLR発現を抑制すると、LPSの取り込みが減少し、予後が悪化する。その為、脂質受容体を介した病原体脂質の不活性化は、敗血症の予後に保護的な役割を果たしていると考えられている。【目的】LPS はvery low density lipoproteinとも結合することより、very low density lipoprotein receptor(VLDLR)を介してLPSが代謝されると仮定し、脂肪組織によるVLDLRを介したLPSの取り込みが、病原体脂質の不活性化に関与しているかどうかを明らかにすることを目的とした。【方法】VLDLR増加モデルとしてPCSK9ノックアウトマウスを、VLDLR減少モデルとしてVLDLRノックアウトマウスを用い、LDLR関与を確認する目的でLDLRノックアウトマウスを使用した。LPSを静脈内投与し、コントロール群と各ノックアウト群で、脂肪組織におけるLPSの取り込みを比較検討した。また、3T3-L1細胞を用い、成熟脂肪細胞における、LPSの取り込み及びVLDLRタンパク発現に対するPCSK9の効果について検討した。【結果】脂肪組織によるLPSの取り込みはコントロール群と比較し、VLDLRノックアウト群で減少し(p=0.023)、PCSK9ノックアウト群で増加し(p=0.013)、LDLRノックアウト群では差がなかった。また、成熟脂肪細胞ではPCSK9投与により、LPSの取り込みが抑制され(p=0.020)、VLDLRタンパク発現(p=0.007)も減少した。【結論】脂肪組織でのLPS取り込みにはVLDLRが影響しており、VLDLR発現の増加によりLPSの取り込みも増加した。脂肪組織が多い患者はより多くのVLDLRを発現するため、より多くの病原体脂質を処理できる可能性がある。従って、敗血症におけるobesity paradoxの機序のひとつとして、脂肪組織によるVLDLRを介した病原脂質の取り込みが寄与していると示唆された。