[PD8-5] If muscle works, use it(使える筋肉は使おう)!-敗血症急性期における早期筋刺激の効果-
【背景】敗血症診療における適切な栄養管理は集中治療の屋台骨として重要だが、敗血症時の栄養代謝動態の変化の詳細と有効な治療的介入については未だ不明瞭な部分が多い。また、敗血症急性期の運動介入や神経筋電気刺激(Neuromuscular electrical stimulation; NMES)の効果については、ICUAW予防のための早期リハビリとしての効果が報告されているが、代謝や生存率に与える効果は明らかでない。【目的】以下の3つの基礎研究により、敗血症時の代謝動態の変化と、敗血症急性期の代謝および生存率に対する運動とNMESの効果を明らかにした。【方法と結果】敗血症時の栄養代謝動態の変化:敗血症の重症度・時期による三基質の代謝動態の変化を間接熱量測定および尿中窒素測定を用いて調べ、急性期には糖質から脂質優位に代謝動態が変化しタンパク質異化も亢進することを示した(PMID:29804861)。運動介入の効果:敗血症急性期の低強度の運動により、脂質代謝に重要な役割を持つ因子であるPGC-1αの発現が活性化され、脂質代謝が改善することが生存率改善にも寄与していることを示した(PMID:26953756)。神経筋電気刺激(NMES)の効果:腓腹筋に対するNMESに運動同様の効果があるか調べ、NMESがその条件に応じて代謝動態を変化させ、特に糖質から脂質優位に緩やかに変化させる条件で生存率改善効果を発揮し、運動介入と同様にPGC-1α発現と炎症反応抑制が関与していることを示した。【結論】敗血症急性期における運動もしくはNMESにより”使える筋肉を使う”ことが、代謝改善だけでなく生存率改善などの治療的効果を発揮する可能性が示唆された。特にNMESは実臨床において、循環動態不安定な重症患者にも早期筋刺激early muscle stimulationとして適応出来る可能性がある。しかしヒトにおける適切な条件設定は不明であり、さらなる研究が必要である。引き続き臨床的視点からの基礎研究を続けていきたい。