第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY1] シンポジウム1
PICSの予防と対策

Fri. Mar 1, 2019 9:50 AM - 11:50 AM 第2会場 (国立京都国際会館2F Room A)

座長:池松 裕子(名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻), 小谷 透(昭和大学医学部麻酔科学講座)

[SY1-4] PICS予防と対策に向けたICU-HCU連携リハビリテーション ~リハを早期に開始し、滴定し、継続・拡充する~

河合 佑亮1, 村松 恵多1, 篠原 史都2, 水谷 公司2, 中村 智之3, 原 嘉孝3, 幸村 英文3, 柴田 純平3, 山下 千鶴3, 西田 修3 (1.藤田医科大学病院 看護部, 2.藤田医科大学病院 リハビリテーション部, 3.藤田医科大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

同時通訳付き】

日本版敗血症診療ガイドライン2016では、PICSの予防に早期リハビリテーション(リハ)を行うことが弱く推奨されている。当院集中治療部で支援するリハの3つの柱は、プロトコルに準じて早期に開始するリハ、多職種で議論する患者中心のリハ、ICU退室後も継続・拡充するリハである。今回、当院でのリハの実際を報告し、PICS予防と対策について検討する。
当院は2015年にリハプロトコルを導入した。開始基準を設けず、ICU在室が48時間以上と予測される全患者に、入室2日以内に多職種でのリハを開始している。プロトコルは他動的ROM訓練を含むSTEP:0から、歩行を含むSTEP:5までの6段階で構成される。開始基準の代わりにSTEPを進めないための基準を設け、この基準に該当しない且つRASS:-2~+1の患者にはSTEPを進めて積極的な運動を支援している。また、多職種カンファレンスを毎日行い、患者の病態と目標・価値観に応じたリハプログラムを議論している。プロトコルにはSTEP:1でポジショニングが追加される。個々の病態に適した詳細な体位管理計画をICU専任理学療法士が中心に立案し、多職種で実施している。STEP:2では日常生活動作の支援が追加される。患者の希望や趣味に応じた支援を看護師が中心に実施している。会話が好きな患者に筆談を用いた24時間継続したリハを支援することで、ペンを握る利き手の機能を著しく改善させた事例を経験した。STEP:3では端座位が追加され、中止基準を設けて実施している。2015年8月~2016年12月のプロトコル対象患者674名での有害事象発生率は3.3%(206 / 6208件)で、安全なICUでのリハを実現できている。一方で、ICU退室後にリハが減退し、患者の活動レベルが低下する報告がある。ICU退室後も患者の治療や生活は続く。PICS予防と対策のためには、リハを継続・拡充することが重要である。当院では患者の病態改善後、ICUからHCUへ転室となる。HCUでは看護師が中心にリハを支援している。また、PICS発症またはそのリスクが高い患者には、ICU専任理学療法士が担当を継続する体制を整えている。HCU入室当日には、Post ICU患者の75%がSTEP:5のリハを実施している。ベッド上でのリハに加え、毎日2回以上のベッド外でのリハを支援することで、Post ICU患者の約9割がHCU退室までに歩行機能を再獲得している。HCUでのベッド外リハの呼吸・循環に関する有害事象発生率は1%未満であり、HCUにおいても安全なリハを実現できている。