第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY1] シンポジウム1
PICSの予防と対策

Fri. Mar 1, 2019 9:50 AM - 11:50 AM 第2会場 (国立京都国際会館2F Room A)

座長:池松 裕子(名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻), 小谷 透(昭和大学医学部麻酔科学講座)

[SY1-5] 敗血症患者に認められる急性期脳萎縮 –post intensive care syndromeとの関連性について–

細川 透, 伊原 慎吾, 松岡 俊, 井口 梅文, 桑名 司, 山口 順子, 木下 浩作 (日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野)

同時通訳付き】

【背景】重症疾患後のquality of lifeは同世代の健常人と比べて低く、PICSとの関連が示唆されている。しかしPICS概念は曖昧であり、病態については明らかになっていない。現在推奨されているのは予防や発症後の対処が主であり、根本的原因に対する介入について論じられることは少ない。【目的】PICSの病態を解明するために、ICU入室原因の上位である敗血症患者に着目し、神経予後と短期間の器質的な脳萎縮との関連について検討し、PICSの原因と介入点を探索すること。【方法】検討1:2017年4から2018月3月に当救命センターに入室した20歳以上の敗血症患者について、経過中の意識障害の発生と頭部CTでの脳萎縮およびMRIの急性期変化を後方視的に脳器質的傷害の有無を検討した。脳萎縮は、入院時および経過中に施行した頭部CT上でのBicaudate Index (BI)を用いて前頭葉での脳室拡大の程度で評価した。検討2:検討1の結果を受けて、2018年2月から7月に当救命センターに入室した20歳以上の敗血症患者について頭部CTでの脳萎縮の経過を前方視的に検討した。【結果】検討1:検討期間中に入室した敗血症患者は118例であり、うち94例に経過中に意識障害を認めた。経過中に2回以上頭部CT上を施行した30例でBIの変化を検討したところ、BIは有意に増加(p=0.0002)していた。25例で頭部MRIを施行しており、そのうち14例(56%)で脳梗塞などの急性期異常所見を認めた。検討2:検討期間中にICUに入室した敗血症患者は29例であり、うち24例に臨床研究の同意が得られた。経過中に2回以上頭部CTを施行した16例でのBIの変化は、有意に増加していた(p=0.0008)。【結語】敗血症患者では短期間に脳室拡大が進行し、脳萎縮が起きている可能性が示された。経過中の低酸素や低血圧がその一因と考えられるが、画像上脳器質的傷害がない症例でも脳萎縮を認めることが明らかとなった。心停止後症候群では、血中neuron specific enolase (NSE)の上昇と神経学的転帰が相関し、二次性脳損傷の進行と関係する可能性を指摘してきた(Critical Care 2017)。今後脳萎縮が起こる機序とPICSとの関連性を検討することで、予防・治療への可能性を模索したい。