第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY10] シンポジウム10
(小児集中治療委員会企画) PICUがなぜ必要か ~大人と子どもの違いはどこにあるのか?~

2019年3月2日(土) 15:35 〜 17:35 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:黒澤 寛史(兵庫県立こども病院小児集中治療科), 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター救命・集中治療部)

[SY10-1] PICU連絡協議会年次調査報告 ~シンポジウムテーマの視点からの分析~

小泉 沢 (宮城県立こども病院 集中治療科)

【はじめに】重症小児をPICUに集約することや、PICUに小児集中治療医が専従し診療にあたることにより、生命転帰は改善し、医療資源の適正使用につながるとする報告がある。そのため欧米では、PICUは小児集中治療医により統括・運営されることが一般的である。【目的】わが国におけるPICUの現状を明らかにすること。【方法】PICU連絡協議会に参加しているPICUを対象に、小児集中治療委員会より2013年度から年1回施設調査を実施した。調査項目は、病床数、専従医数、入室患者数、予測死亡率、実死亡率、治療内容等とした。【結果】2017年度は27病院、28ユニットを対象とした。専従医を配置しているPICUは22ユニット(79%)で、そのうち専従医が24時間365日PICU診療を管理しているのは14ユニット(50%)であった。病院間搬送を担う搬送チームは17病院(63%)で整備されていた。PICU総病床数は280床、中央値(最大-最小)8床(25-4)であった。年間入室症例数は合計10,941例、中央値328例(1094-93)であった。年齢分布(平均値±標準偏差)は、28日未満11±7%、28日以上1歳未満31±9%、1歳以上15歳未満53±13%、15歳以上5±3%であった。入室経路に関しては、手術後あるいはカテーテル後の入室57±20%、病棟からの転棟18±14%、救急受診後の入室12±13%、転院搬送14±8%であった。心臓血管外科手術を実施された症例は34±24%であった。治療に関して、人工呼吸療法は55±18%に施行され、ECMOの年間実施症例数は中央値3例(16-0)、急性血液浄化療法は中央値4例(66-0)であった。転帰に関しては、平均死亡率1.6%、PIM2あるいはPIM3による予測死亡率を用いた標準化死亡比が1未満となったのは25施設であった。【考察】重症の小児救急患者の発生数は成人・高齢者と比較して少ないため、小児集中治療を担うPICUは、小児医療に精通し小児特有の疾患群(先天性心疾患周術期など)に対応できるだけではなく、救命初療との連携や安全な搬送システムの構築により地域の重症患者を集約化する必要があると考えられる。本調査ではPICUの半数はいわゆるclosedであり、術後に加えて院内外の救急患者を診療するPICUが多かった。2/3の施設で集約化のための搬送チームを整備していた。症例の4割は1歳未満で、先天性心疾患周術期が3割程度を占めていた。しかし大規模PICUは少なく、各施設が年間に実施しているECMOや急性血液浄化療法などの症例数は少なかった。【結語】わが国のPICUの現状を報告した。わが国のPICUによる診療が転帰に与える効果を検証した論文は限定的であるため、今後はPICU施設整備のあり方について検討すると共に、PICU診療の質やPICU専従医の存在意義を評価する必要がある。