[SY12-2] 低心機能患者の開心術術後管理に循環器内科が参画することは重要である
【 ライブ配信】
【背景と目的】術前より高度な心機能低下(LOS)を有する症例では術後集中治療管理に難渋する.当センターでは内科的治療の限界から開心術を選択した症例に対しては循環器内科(循内)による積極的な治療介入を依頼して長期ICU滞在の回避を図っている.循内介入することで良好な予後を得た3例を経験したがそのうちの最重症症例の経過を供覧し,今後のICU治療戦略としての有用性を検討する.【症例】AMI診断後当センターへ転送となった51歳男性.緊急PCI施行後DOB7γ,NAD0.3γ投与下にCCU管理となった.TTE上LV壁運動はびまん性に低下,EF20%のためIABPとPCPS補助を導入.1週間後にPCPS,翌日にIABPを離脱したが乏尿傾向でMR・TRも増悪した.内科的治療の限界となり約1か月後にICM,MR,TRの診断に対して緊急MVR,TAP,CABGを施行した.【術後経過】術後はDOB7γ,AD0.2γ,NAD0.3γ,VSP1.8単位/時間を投与,IABP補助下にICUに入室し,CI 1.7l/min.m2,SvO244%,LVEF10~20%,血圧は60mmHg台であった.DOBを増量(10γ)して術後8日目にIABPを抜去,11日目にAD投与中止,血行動態の変化がなかったため肺動脈カテーテルを抜去した.以後循内施行TTEによる左室流出路の時間速度積分値(TVI)(正常値:15~25cm)を心拍出量の指標とした.術後13日目DOB9γ,NAD0.1γ投与下にTVIは8.一時的心室ペーシングを用いたHR100bpm条件下ではTVIは7,自己脈のHR70bpmではTVI 9であったため自己脈管理とした.術後15日目にはLV中隔基部と下後壁基部が収縮しはじめTVIも10に改善.循内指示でピモベンダン内服を開始しTVIを参考にDOBの減量をすすめたが血圧低下とCVP上昇,TR増悪のためDOBを10γまで戻し除水優先とした.術後22日目にはドカルパミン内服を開始し緩徐にDOBの減量を図った.術後1か月の時点ではDOB8γ投与下でTVI 12~13,CVP(6),TRは軽減.術後3か月に腹膜透析を導入,DOB投与を中止しICUから退室,その1か月後にリハビリ病院に転院した.【考察】LOS患者の開心術術後集中治療管理に循環器内科医が積極的に介入することは以下の利点がある.(1)技術差のないTTEによる低侵襲心機能評価(TVIなど),(2)(1)に基づいたカテコラミンの緩徐かつ細かな調節,(3)内服強心薬へのスムーズな移行.以上の効果として,術後集中治療医の管理のみでは難渋したLOS患者のICU退室と退院の可能性が高まるものと期待する. 【結論】ICU術後管理への循環器内科医の積極的介入はLOS患者の予後改善・救命につながるものと考える.