[SY17-1] くも膜下出血の術後管理:脳神経外科医の立場から
くも膜下出血(SAH)において介入可能な転帰関連因子として,発症直後から生じる早期脳損傷(EBI)と,主として遅発性脳血管攣縮に関連して発症4ー14日頃にかけて生じる遅発性脳虚血(DCI)がきわめて重要である.
来院直後の神経蘇生
・再破裂予防のため,十分な鎮痛,鎮静,降圧を行いつつ,呼吸・循環管理と迅速な神経学的評価を行う.
・たこつぼ型に代表される心筋運動障害に対してはカテコラミンの投与,神経原性肺水腫に対してはPEEPで対処する.
破裂脳動脈瘤の根治術後はDCIの予防を念頭に置いた管理を行う.神経学的検査が基本である.麻痺や失語だけでなく不穏や精神症状もDCIの初発症状の可能性がある.血管攣縮があれば血管内治療を考慮する.DCIの予防としてエビデンスのあるニモジピンはわが国では認可されていない.ニカルジピンを投与する施設が多い
・血管内容量の評価と維持:Normovolemia, Normotensionが基本である.従来推奨されたtriple H (Hypervolemia, Hypertension, Hemodilution)療法は,DCIの予防目的では推奨されない.DCI発症時には昇圧と容量負荷を行う.
・血液電解質:低Na血症はDCIに関連する.中枢性塩分喪失症候群(CSWS),ADH分泌過剰症(SIADH)により低Na血症が,尿崩症(DI)により高Na血症をきたす.CSWSに対してはNa投与とfludrocortisone投与を行い,Na<135mEq/Lにならないよう管理する.
・血糖管理:血糖値<80mg/dLの低血糖,>200mg/dLの高血糖を避ける.適宜ブドウ糖とインスリンで補正する.また,血糖値の変動を最小限に留める.
・ヘモグロビン:8ー10 g/dL以上を維持すべく必要があれば輸血を行う.
・アルブミン:3.0g/dLが望ましい.アルブミン製剤の投与にて対処する.
・体温管理:感染症がなくとも発熱は頻回にみられる.クーリング,NSAIDs等にて対処する.
・感染症:肺炎,尿路感染症の順に多く,転帰不良に関連する.
・てんかん発作予防:発作があればレベチラゼタム等を投与する.
・遅発性脳虚血の予防のための薬剤:塩酸ファスジル,オザグレルが推奨され,プレタールも有望である.
・ 脳血流評価:ベッドサイドでの経頭蓋ドップラー血流測定が推奨される.適宜CTA/CTP, MRA/MRPによる血管径と脳血流の評価を行う.
・持続脳波:非痙攣性てんかんの診断のため望ましい.
参考
日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 (編).くも膜下出血.“脳卒中治療ガイドライン2015” 協和企画,pp181ー208, 2015
Diringer MN, et al: Critical Care Management of Patients Following Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: Recommendations from the Neurocritical Care Society’s Multidisciplinary Consensus Conference. Neurocritical Care 15: 211ー240, 2011
来院直後の神経蘇生
・再破裂予防のため,十分な鎮痛,鎮静,降圧を行いつつ,呼吸・循環管理と迅速な神経学的評価を行う.
・たこつぼ型に代表される心筋運動障害に対してはカテコラミンの投与,神経原性肺水腫に対してはPEEPで対処する.
破裂脳動脈瘤の根治術後はDCIの予防を念頭に置いた管理を行う.神経学的検査が基本である.麻痺や失語だけでなく不穏や精神症状もDCIの初発症状の可能性がある.血管攣縮があれば血管内治療を考慮する.DCIの予防としてエビデンスのあるニモジピンはわが国では認可されていない.ニカルジピンを投与する施設が多い
・血管内容量の評価と維持:Normovolemia, Normotensionが基本である.従来推奨されたtriple H (Hypervolemia, Hypertension, Hemodilution)療法は,DCIの予防目的では推奨されない.DCI発症時には昇圧と容量負荷を行う.
・血液電解質:低Na血症はDCIに関連する.中枢性塩分喪失症候群(CSWS),ADH分泌過剰症(SIADH)により低Na血症が,尿崩症(DI)により高Na血症をきたす.CSWSに対してはNa投与とfludrocortisone投与を行い,Na<135mEq/Lにならないよう管理する.
・血糖管理:血糖値<80mg/dLの低血糖,>200mg/dLの高血糖を避ける.適宜ブドウ糖とインスリンで補正する.また,血糖値の変動を最小限に留める.
・ヘモグロビン:8ー10 g/dL以上を維持すべく必要があれば輸血を行う.
・アルブミン:3.0g/dLが望ましい.アルブミン製剤の投与にて対処する.
・体温管理:感染症がなくとも発熱は頻回にみられる.クーリング,NSAIDs等にて対処する.
・感染症:肺炎,尿路感染症の順に多く,転帰不良に関連する.
・てんかん発作予防:発作があればレベチラゼタム等を投与する.
・遅発性脳虚血の予防のための薬剤:塩酸ファスジル,オザグレルが推奨され,プレタールも有望である.
・ 脳血流評価:ベッドサイドでの経頭蓋ドップラー血流測定が推奨される.適宜CTA/CTP, MRA/MRPによる血管径と脳血流の評価を行う.
・持続脳波:非痙攣性てんかんの診断のため望ましい.
参考
日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 (編).くも膜下出血.“脳卒中治療ガイドライン2015” 協和企画,pp181ー208, 2015
Diringer MN, et al: Critical Care Management of Patients Following Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: Recommendations from the Neurocritical Care Society’s Multidisciplinary Consensus Conference. Neurocritical Care 15: 211ー240, 2011