第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY17] シンポジウム17
集中治療医はクモ膜下出血患者を診るべきである

2019年3月3日(日) 10:20 〜 12:20 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:江川 悟史(TMGあさか医療センター神経集中治療部), 末廣 栄一(山口大学医学部附属病院先進救急医療センター/脳神経外科)

[SY17-4] 遅発性脳虚血:診断と治療

櫻谷 正明1,2,3 (1.JA広島総合病院 救急・集中治療科, 2.奈良県総合医療センター 集中治療部, 3.倉敷中央病院 集中治療科)

 クモ膜下出血は致死的な疾患であり、24時間以内の死亡はおよそ1/4、30日死亡は半数弱、大きな後遺症なく退院できる人は1/3程度とも言われている。クモ膜下出血72時間以内におこるEBI(Early Brain Injury)および、それ以降に起こりうるDCI(Delayed Cerebral Ischemia)をいかにうまく管理するかが予後と大きく関わってくるだろう。
 脳血管攣縮は画像で確認された脳血管の攣縮で、DCIは意識レベルの低下(GCS 2点以上の低下)や新規の巣症状が1時間以上持続する場合と定義されている。DCIには脳血管攣縮のほか、微小血管収縮や微小血栓、皮質拡延性抑制(cortical spreading depression;CSD)などが関係している。動脈瘤破裂によるクモ膜下出血患者に血管造影を行ったところ、およそ70%に脳血管攣縮が認められ、20-30%がDCIに至ると報告されており、その頻度は決して少なくない。DCIは典型的にはクモ膜下出血発症4日頃から起こり、7-8日でピークに達し、14日間程度までが好発時期とされている。一旦、DCIを起こすと治療が困難なことが多く、まず予防することが重要である。
 DCIの他にも、クモ膜下出血後には頭蓋内として動脈瘤の再破裂、水頭症、痙攣発作などがあり、頭蓋外合併症にはタコ壷型心筋症、神経原性肺水腫、発熱、貧血、電解質異常、消化管潰瘍、静脈血栓症など様々な合併症がある。体液管理については、循環血液量の減少による脳灌流の低下には気をつけなければならないが、過剰輸液により神経予後が悪化する可能性も指摘されており、euvolemiaを意識した体液管理が望ましいとされる。前述したように呼吸・循環の合併症を伴っている場合もあり、中枢性塩類喪失症候群や尿崩症を伴っているケースではさらに循環管理は難渋する。このような全身管理を24時間継続して行うためには、脳外科医だけではなく、集中治療医も協力して診療を行う方が有用ではないかと考える。
 また、DCIは多彩な症状を呈し、意識レベル低下(GCS 2点以上)のほか、血圧上昇、頭痛、半身麻痺、失語症、半盲、無視、せん妄などがあり、ちょっとした異常でもDCIを想起することが重要である。早期発見するためにはベッドサイドで看ている看護師の役割も大きい。栄養管理、リハビリテーションも重要で、クモ膜下出血患者の診療をチームで行うことにより自宅退院を増加させたという報告もあり、脳外科医や集中治療医だけではなく、コメディカルも含めたチームで診るということが何より大切である。
 本講演では循環管理を中心に、DCIの予防・治療を当院での現状を踏まえ報告する。