[SY17-5] くも膜下出血後のearly brain injuryへの治療介入
くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)によって生じる脳障害は、発症時期により大きく2つに分類され、early brain injury(EBI)とdelayed cerebral ischemia(DCI)という。これまで特にDCIがいわゆるspasmとして注目され、spasmの早期診断と治療による生命予後や機能的予後の改善が期待され様々な研究が行われてきた。一方でEBIもDCIと同様に死亡率やアウトカムに影響し、それ自体がDCI発症の要因のひとつとなる可能性も指摘されており、EBIに対し早期治療を行うことで予後の改善が見込めるのではないかと期待され、近年注目されつつある。
EBIとは、SAH発症後72時間以内に生じる急性期の脳障害のことで、動脈瘤破裂によって生じる一過性の広範囲脳虚血やくも膜下腔への出血それ自体の影響、またそれによって惹起される炎症によって生じる事象を包括した病態のことを示す。動脈瘤が破裂した場合、血液がくも膜下腔、脳実質内、脳室内に流出し、急速にintracranial pressure(ICP)が高まる。これにより脳灌流圧(cerebral perfusion pressure:CPP)が急速に低下するため広範囲の脳虚血や一部脳梗塞が生じて意識レベルの低下や消失をおこす。脳虚血と再灌流傷害、そしてくも膜下腔へ放出された血液自体などといった様々な病態生理機序によって炎症カスケードが惹起され、脳血液関門(blood brain barrier:BBB)の破綻、脳血管壁での微小血栓(microthrombosis)形成、広汎性脱分極(cortical spreading depression:CSD)といった病態も関与し、脳浮腫や脳神経細胞のアポトーシスを誘発する。このような機序で説明されるSAHの発症72時間以内に生じる病態がEBIである。
このようにEBIが生じる生理学的機序については解明されてきているが、その治療については近年様々な観点から基礎研究を含めて検証されているものの、残念ながら現時点では確立されていないのが現状である。しかし、それ自体がDCIの要因のひとつとして指摘されている点や予後への影響が考えられているという点からもEBIを意識した急性期管理は重要であるといえる。SAH後の症例において早期からEBIが生じていることを認識し、脳損傷だけにフォーカスを当てるのではなく全身管理を徹底して集中治療を行うことで、EBIや二次性脳損傷を最小限にし予後改善につなぐことができる。
EBIとは、SAH発症後72時間以内に生じる急性期の脳障害のことで、動脈瘤破裂によって生じる一過性の広範囲脳虚血やくも膜下腔への出血それ自体の影響、またそれによって惹起される炎症によって生じる事象を包括した病態のことを示す。動脈瘤が破裂した場合、血液がくも膜下腔、脳実質内、脳室内に流出し、急速にintracranial pressure(ICP)が高まる。これにより脳灌流圧(cerebral perfusion pressure:CPP)が急速に低下するため広範囲の脳虚血や一部脳梗塞が生じて意識レベルの低下や消失をおこす。脳虚血と再灌流傷害、そしてくも膜下腔へ放出された血液自体などといった様々な病態生理機序によって炎症カスケードが惹起され、脳血液関門(blood brain barrier:BBB)の破綻、脳血管壁での微小血栓(microthrombosis)形成、広汎性脱分極(cortical spreading depression:CSD)といった病態も関与し、脳浮腫や脳神経細胞のアポトーシスを誘発する。このような機序で説明されるSAHの発症72時間以内に生じる病態がEBIである。
このようにEBIが生じる生理学的機序については解明されてきているが、その治療については近年様々な観点から基礎研究を含めて検証されているものの、残念ながら現時点では確立されていないのが現状である。しかし、それ自体がDCIの要因のひとつとして指摘されている点や予後への影響が考えられているという点からもEBIを意識した急性期管理は重要であるといえる。SAH後の症例において早期からEBIが生じていることを認識し、脳損傷だけにフォーカスを当てるのではなく全身管理を徹底して集中治療を行うことで、EBIや二次性脳損傷を最小限にし予後改善につなぐことができる。