第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY19] シンポジウム19
集中治療における高度実践看護師の役割

Sun. Mar 3, 2019 2:15 PM - 3:45 PM 第5会場 (国立京都国際会館1F Room D)

座長:宇都宮 明美(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻), 鈴木 智恵子(日本医科大学付属病院看護部)

[SY19-1] 急性・重症患者看護専門看護師

新山 和也 (埼玉医科大学国際医療センター 救命救急センターICU)

 高度実践看護師という用語は、1980年代以降に米国において専門看護師(Clinical Nurse Specialists:CNS)などの資格を有した看護師に対して用いられている。本邦においては、認定看護師と専門看護師(Certified Nurse Specialist:CNS)が該当すると考えている。日本看護協会が定める専門看護師の役割は、重症度の高い患者・家族に対する直接的ケア、医療スタッフに対するコンサルテーションのほか、倫理的問題やケア提供者などに対する調整、組織のケア水準を高めるための教育、研究と多岐にわたる。
 近年、超高齢社会による疾病構造の変化、技術のテクノロジー化、医療者の専門分化、診療報酬の改定など社会や医療を取り巻く環境は常に変化し複雑化しているが、集中治療の現場も例外ではない。特に、集中治療という現場を考えた時に、医療者の専門分化は、患者に医療を提供するうえで最も大事な「安全」を脅かしていることがある。本来、どの医療者も「Patient centered」の視点で物事を考えていかなくてはいけないが、医療者間の業務の押し付け合いや無関心により、「Patient centered」の視点が欠如していると言わざるを得ない事がしばしば起こる。しかし、このような事象は単に医療者の視点だけが問題となっているわけではなく、システム、コミュニケーションといった様々な要素があり、解決が難しい場合もある。先手を打つか、後手になるかはさておき、先にあげた役割以外に専門看護師には、多職種が患者・家族の目標に対して協働するチームの結成や活動、ケアシステムの開発・修正などを行う「チェンジエージェント」としての役割があり、集中治療を受ける患者に対して、より安全で回復を促進させる環境を整えていく責務があると考えている。この「チェンジエージェント」としての役割を効果的に発揮するためには、専門看護師の革新的なリーダーシップ能力は欠かせない。革新的なリーダーシップ能力とは、あらゆる環境の変化に際しても俯瞰的な視点で臨機応変に実践、教育、研究、管理などを統合し、患者・家族、様々な医療者の意見に対し公平に耳を傾け、よいケア環境を醸成していくことであると考える。チームビルディングプロセス、変革理論など理論ベースにしたチーム結成、システム開発などは、専門看護師の得意とするところではないだろうか。
 国際看護師協会は、高度実践看護師を「専門知識の基礎、複雑な意思決定の技術と拡大された実践における臨床能力を習得した看護師。拡大された実践の特徴は、高度実践看護師が実践することを認められた国と背景によって形作られる。」と定義している。ということは、専門看護師は国、地域あるいは施設によって変化しうるし、立場などによっても三者三様の様相を呈するだろう。本シンポジウムでは、私自身の活動を紹介しながら、今回、専門看護師(急性・重症患者看護分野)の立場から、集中治療における高度実践看護師の役割について考察する。