[SY19-3] 周術期医療を担う周麻酔期看護師の養成と実践活動
聖路加国際大学は、2010年より大学院修士課程上級実践コースに周麻酔期看護学を開講し、2012年より修了生を毎年輩出している。周麻酔期看護師(Perianesthesia Nurse:PAN)の定義は「麻酔にかかわる周術期医療の中で、麻酔科医を中心としたチームの一員として機能し、患者にとり最善の麻酔が施されるよう看護師として麻酔業務を補助する。」であり、実践業務は全て保助看法「診療の補助」の範囲内であり、麻酔科専門医の監督・直接指示の下で麻酔補助を専門に行う看護師である。外科的侵襲から生体を防御することを主業務とする麻酔科医の視点を持ち、看護師として全人的な視点でケアを行うことで、患者への医療の質と安全を向上させることを目的とする。大学院での周麻酔期看護学の養成は、上級実践コースの急性期領域の中でも麻酔に特化したカリキュラムで構成される。既に急性期の臨床経験を持った看護師への教育であり、患者に対する麻酔科医の思考や行動過程、リスク管理の理解が中心である。必要な履修単位は計44単位以上であり、1年次は主に麻酔科医による専門講義、研究法などの看護学、高機能シミュレーターを用いた演習、また特定行為研修でも行われる医系3講義(病態生理、薬理学、フィジカルアセスメント)を含む。2年次は演習に加え病院での臨床実習、2年間の集大成として課題研究を行う。大学院修了後は院内認定を受けた施設に就職し、実践活動をスタートさせる。現在、周麻酔期看護師の養成機関は全国に4校あり、就労できる施設は6施設であり今後も拡大が予想される。臨床業務は、麻酔科に所属し専門医の直接の指示、監督のもとで、低リスク手術麻酔症例への限定的な医療行為を含む麻酔補助を行う。さらに手術室外業務として、術前外来、術後疼痛管理、鎮静下検査処置、無痛分娩管理などを、麻酔科医や多職種チームと協働しながら実践し、その活動は院内でも徐々に認知されている。患者を中心とした周術期医療の中で、薬剤師、外来・病棟・手術室看護師、事務関連の多職種と連携し良好なチームが構築されている。発表では、新たな看護専門職の大学院養成課程と、臨床での手術室内・外での実践活動、周術期チーム医療の拡大と今後の方向性について討論したい。