第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY2] シンポジウム2
ICUにおけるサルコペニア対策 私たちの取り組み

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:30 PM 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:齊藤 正和(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院), 西田 修(藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

[SY2-2] ICU-AWの対策

飯田 有輝, 伊藤 武久, 大川 晶未, 西村 将吾, 井本 晶太 (厚生連海南病院 リハビリテーション科)

ICU管理に伴う身体機能の障害は、ICU-acquired weakness (ICU-AW) と呼ばれている。その特異的な全身性の神経筋障害はICU退室後も残存し、日常生活やquality of lifeを長期にわたって制限する。ICU-AWの発生には強い全身炎症に誘引された異化作用亢進が関係する。機序としては、サイトカイン産生による微小血管変化、代謝障害、電気生理学的変化が複合的に作用することで、全身性に筋蛋白異化ならびに神経機能障害が発生する。ICU-AWの病態生理を全身炎症による異化亢進のプロセスからみると、疾病発症から3~5日までの全身炎症を背景としたearly phaseと、その後異化状態が緩徐に進行するlate phaseの2つの相に分けられる。敗血症など重症疾患における筋蛋白分解の要因として、early phaseでは免疫抑制と過剰な炎症刺激により急性蛋白異化が促進されているのに対し、late phaseでは遷延する炎症反応、不活動から誘引される筋萎縮、恒常性の低下など筋蛋白異化/同化アンバランスが要因として考えられている。このようにearly phaseとlate phaseでは背景となる主要因が異なるため、対策もそれに合わせたものとなる。ICU-AWのリスクファクターとして、敗血症など疾患の重症度、不活動、高血糖、ステロイドや筋弛緩薬の使用が挙げられる。Early phaseにおけるICU-AWの対策としては、これら医原性の因子を如何に軽減するかが主要な取り組みとなる。ICU-AWの促進因子を抑制するため低栄養の是正も重要である。Late phaseにおける慢性的な炎症状態は、chronic critical illness:CCIと呼ばれる。この時期は、慢性炎症から誘引された体重減少、筋蛋白減少、運動機能低下、ならびに食欲低下の発生を認め、悪液質の病態を呈していると言える。このようなICU-AWの病態に対して、異化/同化バランスを是正することを目的に、我々は栄養療法と運動療法を組み合わせて介入している。具体的には、入室48時間以内からの高蛋白質栄養およびアミノ酸摂取と神経筋電気刺激療法(neuromuscular electrical stimulation: NMES)を含めた運動療法の併用である。今回、高蛋白質栄養とNMESの介入について、単独使用あるいは使用しない群と併用した群との比較検討を行ったので報告する。また、PICS予防ではICU-AWへの直接的な介入としてEarly mobility and exercise を提示しているが、新たに提唱されたABCDEFGH bundle では、「Good handoff communication」、すなわち「良好な申し送り伝達」を追加、推奨している。ICU-AWを含めたPICSの遷延に対する予防策として、ICU退室後あるいは退院後におけるPICS対策の継続について当院の取り組みを概説する。