第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY2] シンポジウム2
ICUにおけるサルコペニア対策 私たちの取り組み

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:30 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:齊藤 正和(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院), 西田 修(藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

[SY2-5] 急性期病院における気管切開患者の嚥下予後関連因子の検討~嚥下内視鏡検査が有用か~

藤原 麻美子1, 長井 美樹2, 臼井 章浩3, 得能 幹生1, 小畠 久和4 (1.堺市立総合医療センター リハビリテーション技術科, 2.堺市立総合医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科, 3.堺市立総合医療センター 救急外科, 4.堺市立総合医療センター 集中治療科)

【背景】急性期病院では、ICUで挿管して全身管理を行った後に人工呼吸器離脱や気道分泌物の排痰が困難な患者には、通常気管切開を行う。しかし気管切開をすると、気管カニューレの影響によって嚥下機能が大きく阻害されることから、誤嚥のリスクが高まる。急性期の気管切開患者は一般に重症であるため、誤嚥は全身状態を著しく悪化させる恐れがある。そのため、このような患者には早期経口摂取を躊躇してしまい、結果として廃用症候群を招き、経口摂取獲得が更に遠のくことになる。したがって、気管切開患者の全身管理や嚥下リハビリテーションに携わる者は、当該患者の嚥下機能について十分把握した上で、リスクを回避しながら廃用症候群を予防し、早期に経口摂取を獲得できるよう介入する必要がある。嚥下臨床で用いられる嚥下機能評価の一つに嚥下内視鏡検査(VE)があり、外見からは判断しにくい咽喉頭知覚や咽頭クリアランスなどの客観的評価が可能である。しかし、急性期重症患者に対する使用は未だ消極的である。またこの検査は経口摂取の予後予測に役立つと言われているが、急性期気管切開患者の嚥下予後についてはこれまであまり報告されていない。【目的】急性期気管切開患者の経口摂取予後予測にVEが有用かどうかを検討する。【方法】研究デザインは診療録からの後ろ向き観察研究で行った。期間は2017年4月から2018年6月、対象は堺市立総合医療センターにおいて、気管切開されている患者のうち、VEを受けた者70名とした。VEを施行した日から2週間後の経口摂取状況を経口摂取群、非経口摂取群に分け、2群間における様々な要因として患者背景(年齢、性別、嚥下障害に関する既往、挿管期間)、気管切開関連因子(気管切開理由、カニューレタイプ、呼吸器の有無)、VE時患者因子(ADL、アルブミン値、プレアルブミン値)、及びVE結果(VEスコア、声帯麻痺、口腔器官運動機能)の関係を検証した。【結果】VEから2週間後の経口摂取状況はVEスコア、VE時アルブミン値の2つの因子においてのみ有意差が認められた。さらにVEスコアに関しては、多変量解析でも有意差が認められた(p<0.05)。【結論】VEスコアは急性期切開患者の短期的な経口摂取可否を予測する独立した因子になり得る。重症気管切開患者に対しても、嚥下特徴を客観的に評価し、機能に応じた介入をしていくことが重要である。